2020年12月号掲載

道教思想10講

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著者紹介

概要

「道教」は、日本ではなじみが薄い。だが、中国では儒教、仏教と並ぶ三教の1つだ。『老子』の「道」の思想を基盤に、不老長生を求める神仙術、仏教の影響を受けた経典・儀礼、儒教の思想など、様々な要素から成る。その哲学と教理を、生命観、宇宙論、仏教との関係といった切り口から、わかりやすく解説した入門書である。

要約

道教の始まりと2つの教団

 日本では、道教はあまりなじみがない。しかし、道教は中国において儒教、仏教と並んで三教の1つに数えられて、長い歴史を通じて重要な役割を果たしてきた。

 では、道教の思想とはどのようなものか。

 まず、その始まりから見ていくと ―― 。

道教の始まり

 道教の始まりについて述べることは、実は難しい。2世紀後半、後漢末に民衆運動として起こった太平道と五斗米道を道教の始まりと見なす説が一般的であるが、これは教団組織を持つ宗教として世に出た時点に注目した捉え方である。

 一方、「道教」という語が、仏教に対する中国固有の宗教を指して使われるようになるのは5世紀半ばで、この頃を道教の始まりと見る説もある。

 道教の始まりについて説が分かれるのは、道教がきわめて幅広い内容を含んでいることと関係する。

 道教は、老子の思想を根本とし、その上に不老長生を求める神仙術や、仏教の影響を受けて作られていった経典や儀礼など、様々な要素が時代の推移とともに、多層的に積み重なってできている。これらの他にも、墨子の思想や儒教の倫理思想なども、道教を構成する要素である。

 このように多くの要素が積み重なってできている道教のどこを切り取って起点と見なすかによって、道教の始まりについての見方が変わってくる。

太平道と五斗米道

 太平道を率いたのは、鉅鹿(河北省南部)の張角(?~184)だ。張角のもとに集まった人々は、乱世の中で貧困と病に苦しむ農民たちであったと考えられる。その数は数十万人にも達し、張角はそれを統率し、中平元年(184)に、王朝交替を求める一斉蜂起を行った。

 信徒は、皆、黄色の頭巾を着けて標識としたので、黄巾と呼ばれた。いわゆる黄巾の乱である。黄巾軍は各地の役所を焼き尽くし、一時は都をも震え上がらせたが、鎮圧され、太平道は消滅した。

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