2021年2月号掲載
アンダークラス2030 置き去りにされる「氷河期世代」
著者紹介
概要
2030年に日本で起こること。それは“格差社会化”の完成だ。非正規雇用で、低所得の「アンダークラス」が巨大化する。バブル期に現れたフリーター、就職氷河期に社会に出た若者が中高年となり、社会の中心を占めるようになるからだ。格差拡大、貧困の増大は、社会をどう変えるのか。日本の階級構造研究の第一人者が見通す。
要約
2030年に日本で起こること
2020年に蔓延した新型コロナウイルス感染症。今回のコロナ禍を契機に「就職氷河期」が再来し、さらに就職氷河期が永続する可能性がある。
すでに多くの企業が、来年度の新卒採用を取りやめた。この傾向は今後も続くだろう。このことは、労働市場にさらなる変化を生む可能性が高い。
就職氷河期とは?
まず、就職氷河期について、確認しておこう。
バブル直前の1985年からバブル崩壊直後の1993年までの大卒者の就職率は、80%台半ば~90%弱。フリーター・無業者は4~6万人程度だ。
ところが1994年になると、就職率は79.2%へと急落、フリーター・無業者も8.6万人に達する。就職氷河期の始まりである。氷河期のピークは2000年で、就職率はわずか63.3%、フリーター・無業者数は17.4万人に達した。
その後、状況は回復するが、就職率が1994年を上回るのは2008年。従って、1994~2007年を「就職氷河期」、この時期に卒業を迎えた世代を「就職氷河期世代」と呼ぶことができる。
就職状況の改善は長く続かない。2008年のリーマン・ショックの影響は少し遅れて現れ、2010年には就職率が71.6%と急落、10万人を切っていたフリーター・無業者数は11.7万人に跳ね上がった。就職率が再び80%に達し、フリーター・無業者数が10万人を切るのは2014年で、2010~2013年の4年間は「第2氷河期」と呼んでいい。
2014年以降は、就職状況が改善する。2019年までに就職率はバブル期並みの9割弱に達し、フリーター・無業者は5万人程度まで減少した。
ただ、非正規雇用者まで考慮に入れれば、「バブル期並み」というのは言い過ぎだろう。就職率の中には、非正規雇用が3~4%ほど含まれており、非正規雇用者をフリーター・無業者に加えれば、その数は7万人近くになる。
2030年が日本社会の転換点となる理由
そして、2030年。この年は、日本社会の大きな曲がり角になりそうだ。というのは、格差拡大によってもたらされた日本社会の構造転換が、ついに完成するからだ。
これには、2つの理由がある。