2021年7月号掲載
ナラティブカンパニー 企業を変革する「物語」の力
著者紹介
概要
最近、ビジネスシーンで「ナラティブ」という言葉をよく耳にする。辞書によれば、意味は“物語”。では、従来からよく使われている「ストーリー」とは何が違うのか? また、なぜ今、注目されるのか? 戦略PRの第一人者が、パタゴニア、サンリオなど様々な事例を交えながら、企業を変革する“物語”のつくり方を解説する。
要約
ナラティブの時代がやってきた
ここ数年、世界的なマーケティングやブランドコミュニケーションの領域で、「ナラティブ」という概念が急速に注目されている。
従来、これに最も近い業界用語は、「ストーリーテリング」「ブランドストーリー」だった。ブランドは、自らの物語(ストーリー)を生み出し、発信し、消費者の気を引こうとした。
だが、ストーリーは今、ナラティブという概念にとって代わられようとしている。
ナラティブとは何か?
では、ナラティブとは何なのか?
辞書には「物語。朗読による物語文学」などと記されているが、本書におけるナラティブの定義は、「物語的な共創構造」である。
何らかのストーリー性をはらんだ構造の中で、企業活動(広告、PR、商品開発、人材採用など)が行われる。そしてその物語的な構造に、消費者や従業員、取引先などが巻き込まれる。物語の「聴衆」としてではなく、その「当事者」として、だ。
ナラティブカンパニーの出現
本書では、こうしたナラティブを生み出している企業を「ナラティブカンパニー」と呼ぶ。
例えば、世界的なアウトドア用品大手のパタゴニア。同社は1965年に設立され、ペットボトルをリサイクル活用した衣類などで成長してきた。
2017年12月、同社の公式サイトに突如、以下のメッセージが現れた。
「大統領はあなたの土地を盗んだ」
トランプ政権が、ユタ州の国定記念物指定保護地域の大幅縮小を発表したことに対する反発の行動だ。そして、大統領選を控えた2020年には、「気候変動否定論者を落選させよう」というメッセージが掲載された。