2021年9月号掲載
THE LONELY CENTURY なぜ私たちは「孤独」なのか
Original Title :THE LONELY CENTURY
著者紹介
概要
著者いわく、21世紀は「孤独の世紀」。世界中の人々が孤独を感じ、深刻な問題が生じているという。拍車をかけたのがコロナ禍だ。コンタクトレス化が進む買い物、スマホ中心の人との交流、リモートでの仕事…。身の回りには、孤独の原因があふれている。それらがもたらす“孤独危機”の実態と、その向き合い方を解説する。
要約
孤独の世紀
新型コロナのパンデミックにより、無数の人が自宅に缶詰め状態となり、リモートワークを強いられ、友達や家族を訪ねることもできない。
世界中の「こころの電話相談」には、相談が急増。心理学者によると、「ほとんどの相談者は、感染よりも孤独を恐れている」という。
だが、孤独の世紀はもっと前から始まっていた。
コロナ禍の前から、米国の成人の61%が自分は孤独だと考えていた。ドイツでは人口の68%が、孤独を深刻な問題だと考えている。英国では孤独の問題が深刻になったため、2018年にテリーザ・メイ首相(当時)が“孤独大臣”というポストを新設している。
そして数カ月にわたるロックダウンと自主隔離が、この問題をさらに悪化させた。世界中の人々が、孤独だと感じている。私たちは今、グローバルな孤独危機に見舞われているのだ。
コンタクトレス(非接触)の時代
コロナ禍の前から、“コンタクトレス”は、現代人が積極的に選択するライフスタイルになりつつあった。
“コンタクトレス・コマース”は、2019年秋の時点ですでに成長しつつあるトレンドだった。どの店もセルフレジを設け、実店舗に行かなくても、食料雑貨から処方薬まで自宅に届けてくれるショッピングサイトとアプリも増えていた。
コロナ禍は、こうしたトレンドを一気に爆発させた。これが長期的に何をもたらすのかを、現時点では予測できない。ただ、新しい習慣は一度つくられると、あっという間に根を張るものだ。
私は、コンタクトレスな生活の常態化に不安を抱いている。日々の取引から人間の存在が取り除かれるほど、私たちの孤独は大きくなるのではないか。レジでの交流がなくなり、フレンドリーな店員の顔を見られなくなったら、孤立感や社会との断絶感は一段と大きくなるのではないか。
もっと危険なのは、コンタクトレスでできることが増えるほど、他人とつながる方法を学ぶ機会が失われることだ。私たちはお互いのことをますます知らなくなり、その結果、お互いのニーズや願いに無関心になる危険がある。
一緒にいるけど、一人ぼっち
221回。これは現代人が1日にスマートフォンをチェックする回数だ。