2021年10月号掲載
デタラメ データ社会の噓を見抜く
Original Title :Calling Bullshit:The Art of Skepticism in a Data-Driven World
- 著者
- 出版社
- 発行日2021年7月19日
- 定価2,200円
- ページ数415ページ
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著者紹介
概要
今の世の中は、デタラメだらけだ! 事実ではない情報が、あちこちにはびこっている。中には、数字や統計などで箔づけされ、一見、本当らしいものも。そして、今日のネット社会ではデタラメは一気に拡散し、訂正するのは至難の業だ。そんな厄介な情報に、どう対処すればいいのか。デタラメの特徴を示し、見抜き方を伝授する。
要約
世の中はデタラメだらけ
世の中には、事実ではない情報がたくさん出回っている。下手すれば、私たちはデタラメの海で溺れてしまう。政治家は事実など、どこ吹く風だ。科学はプレスリリースだけが一人歩きする。
デタラメの蔓延は今という時代の特徴であると、哲学者ハリー・フランクファートは指摘した。
「私たちの文化の最大の特徴は、デタラメの多さである。誰もがうなずくはずだ。そして私たちは一人残らず、デタラメに加担している」
デタラメをばら撒くのは簡単だが、回収は困難
例えば、「ワクチンが自閉症の原因になる」という、たちの悪いデマがある。その出所は、1998年に英国人医師アンドリュー・ウェイクフィールドらが『ランセット』誌に発表した研究報告だ。
科学史上これほど徹底的に信憑性が問われ、否定された例も珍しい。膨大な費用と時間が費やされ、その信憑性は完全に否定された。20年越しの調査でも、原因になるという証拠は出てきていない。逆に、それを否定する証拠は山ほどある。にもかかわらず、デマはしつこくはびこっている。
デタラメをばら撒くのは簡単だが、その回収は並大抵の苦労ではない。
ツイッターから押し寄せてくるデタラメ
実際、デタラメをひねりだすのも、それを一気に広めるのもたやすい。
例えば、2013年のボストンマラソンを襲った爆弾テロ。爆破の直後、ある情報がツイッターで拡散した。8歳の少女が命を落とし、その少女は数カ月前に銃乱射事件が起きたサンディーフック小学校の生徒だったという内容だ。彼女は小学校の事件で亡くなったクラスメートを偲んでマラソンに参加したという。
少女の過酷な運命について、ツイッター上で一気に情報が拡散。少女の写真は何千人もの人々の悲しみと同情を誘った。
だが、怪しいと感じた人もいた。ボストンマラソンは子どもの参加が認められていない。噂を追跡するウェブサイトSnopes.comは、少女の死はデマだと暴いた。実際、少女は死んでおらず、ボストンマラソンに参加すらしていなかった。
噂の誤りを正そうと、ツイッターで2000を超える発信があった。だが、誤った情報はすでに9万人以上にシェアされ、大手の報道機関も少女の死を伝えていた。噂の拡散は止まらなかった。