2022年5月号掲載

プーチンとロシア人

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著者紹介

概要

目まぐるしい変化を見せる国際政治において、最も影響力を持つ人物の1人、ウラジーミル・プーチン。ソ連崩壊後、米国と並ぶ超大国の座から滑り落ちたものの、ロシアの存在感はいまだに大きい。プーチンはいかにしてその影響力を保持しているのか。国民が独裁的な彼を支持する理由は…。ロシア研究の第一人者が解説する。

要約

背景 ―― 地勢的環境

 ロシア研究を進める場合、とりわけ肝要なことは、ロシア人のものの考え方と行動様式の特徴をつかむことである。端的に言えば、「ロシア人の研究」が出発点とならねばならない。

広大な空間

 ロシア人の国民的な性格を形づくる諸要因の中でもとりわけ重要なのは、自然的要件である。ロシア連邦の国土は、地球の全陸地の約8分の1、中国や米国の約2倍の大きさである。文字通り世界一の国土面積だ。

 広大な地勢的要件は、ロシア人のメンタリティー形成に大きな影響を与えている。

 第1は、大洋や河川、険しい山脈などの天然の障壁で守られていない大陸国家であること。ロシア民族は「無防備の大草原」に棲息しているのだ。

 広大無辺な領土は、外敵によって侵入されやすい。実際、ロシアはモンゴル、ナポレオン、ヒトラーなどの外敵との攻防に明け暮れた。

ロシアの森がロシアの心をつくる

 ロシア人の精神に強い影響を与えている自然的要件として、森林もあげるべきだろう。

 私たちがトルストイの文学作品などから連想する、美しく絵画的な白樺林ばかりが、ロシアの森ではない。ロシアの森はもっと暗くて不気味だ。いったん迷い込んだら、二度と生きては出てこられない底なし沼の深さを秘めている。だからこそ、ロシアの森林は、ロシアの農民たちが遊牧民たちの侵入から逃れるシェルターとなりえた。

 ところが森でも、弱肉強食の「ジャングルの掟」が支配する。つかの間の暖をとっている時も、人間なり野獣がいつなんどき樹木の背後から襲ってくるかもしれない。このような不安に絶えず怯えていなければならない。

厳冬も性格形成のルーツの1つ

 半年以上も続く冬は、ロシア人の意識の中に次のような感情を育む。

 人生は、毎日が闘いの連続。しかも、その闘いで人間の勝ち目はない。自然を恨んでもどうなるものでもない。長いものには巻かれろ ―― 。

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