2022年7月号掲載

陰謀論入門 ――誰が、なぜ信じるのか?

Original Title :CONSPIRACY THEORIES (2020年刊)

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著者紹介

概要

戦争、感染症、地球温暖化…。こうした話題に関連して、SNSなどで頻繁に登場するのが「陰謀論」だ。そもそも陰謀論とは何なのか。それはなぜ生まれ、拡がっていくのか。社会にもたらす影響は? 陰謀論研究の第一人者が、豊富な事例とデータに基づき、この問題を考える上で必要な知識と、陰謀論への向き合い方を提示する。

要約

なぜ陰謀論に関心を持つべきか

 世の中には、数えきれないほどの陰謀論が存在する。ジョン・F・ケネディ大統領の暗殺に関する陰謀論が、その最たる例だ。調査委員会が犯人を断定しているにもかかわらず、これまで多くの人たちがこれに反する筋書きを主張してきた。

 また、現在でも、地球は温暖化していないと考えている人々がいる。こうした気候変動否定派は、科学者たちが助成金を得るために研究結果を捏造していると言い募る。

陰謀論はなぜ重要か

 我々は、このような様々な陰謀論に関心を持つべきである。その理由はいくつかある。

 1つは、陰謀を防ぐことは何よりも重要であるということだ。もし陰謀論の内容が本当で、不正が実際に行われているのならば、それを止めるために市民に知らせなければならない。また、陰謀論の内容が的外れであったとしても、透明性を高める方向へ働く。例えば、我々が9.11テロについて多くのことを知っているのは、陰謀論者が公式見解に疑問を呈し、詳しい情報を求めたからだ。

 第2の理由は、信念は行動に影響を与えることだ。現実と乖離した見解により行動が引き起こされる場合、それは危険なものとなる可能性がある。

 その実例が、2016年にイギリスで実施されたEU加盟を継続するかどうかを問う国民投票、いわゆる「ブレグジット投票」だ。

 EU離脱に賛成票を投じた多くの人は、虚偽の主張に基づいて行動していた。例えば彼らは、イギリスに入ってくる移民の本当の数や、そこにかかるコストは隠蔽されていると信じていた。また、離脱を支持した人の46%は、鉛筆を使うと内容が書き換えられてしまうため、投票用紙にはペンで記入すべきだと考えていた。そうした人々がEU離脱を支持したこの投票結果は、イギリス、EU、世界に広範な影響を与えることになる。

 こうした陰謀論について、社会科学者たちは研究を続けている。そして彼らの努力によって、多くのことが明らかになってきた ―― 。

陰謀論とは何か

 陰謀とは、権力を持つ個人からなる少人数の集団が、自分たちの利益のために、公共の利益に反して秘密裏に行動するものだ。

 そして陰謀論とは、過去、現在、未来の出来事や状況の説明において、その主な原因として陰謀を挙げるものを指す。陰謀と同じく、陰謀論にも権力を持つ人々の意図や行動がかかわっているため、陰謀論は本質的に政治的なものと言える。

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