2022年7月号掲載
The World[ザ・ワールド] 世界のしくみ
Original Title :The World (2020年刊)
- 著者
- 出版社
- 発行日2021年10月15日
- 定価2,420円
- ページ数457ページ
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著者紹介
概要
米国の地位の低下、中国の台頭、ロシアの世界秩序への挑戦…。今日、世界が直面する問題に、どう向き合うか? 世界の歴史、世界秩序を左右する要因をはじめ、多様な視点から答えを探る。解説するのは、世界屈指の民間外交シンクタンクのトップ。現下の“ウクライナ危機”以前に、ロシアの野心を見透かすなど、その眼力は鋭い。
要約
三十年戦争から第二次世界大戦まで
私たちは人として、社会として、あるいは国としてどんな存在なのか。
歴史は、そうした疑問の答えを求める糸口になる。また、他者や他国についての知識を得て、理解を深めていく後押しになる ―― 。
三十年戦争がもたらした近代的国際体制
近代的な国際体制のルーツは、17世紀のヨーロッパにある。決定的な出来事が、1618年に始まった三十年戦争だ。それまでヨーロッパは複数の帝国と小さな王国で構成され、頻繁に対立していた。三十年戦争が終息した時点で、各国が選んだのは帝国でも公国でもない形で栄えていく道だった。
今日、世界は独立した国々によって構成されるが、この新しい理解を生んだのが三十年戦争の終結をもたらしたウェストファリア条約だ。国家と主権原理によって支配される近代的国際体制は、この条約のもとで確立した。
主権という概念には、3つの基本的特徴がある。
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- ①国は他国の領域を認め、武力行使によって国境線の変更を目論んではならない。
- ②国は他国内の出来事に干渉してはならない。
- ③各国の領域内においては、その国の政府が自由な裁量をもつ。
この思想を順守すれば、戦争は減るはずだった。ところが、各国は頻繁に近隣国の主権を侵犯した。
ナポレオンの台頭とヨーロッパ協調
それでも、この条約が平和な時期をもたらしたことは確かだ。条約の締結後、ナポレオンの台頭まで、ヨーロッパで新たな戦争は始まらなかった。
ナポレオンはフランス革命がもたらした暴走と無秩序を踏み台に権力を握り、ヨーロッパに手を広げた。だが、最終的にはオーストリア、プロイセン、ロシア、イギリスが加わる連合軍に敗れる。
この時の勝者と敗者は1814~15年にウィーンで会議を開く。この会議はのちにヨーロッパ協調と呼ばれるものを生んだ。それは他国への侵攻や、内政問題に対する干渉は禁じるという方針を実践に移すもので、第一次世界大戦前夜まで続いた。
第一次世界大戦
第一次世界大戦が始まった理由については、多くの歴史家が長年探究しているが、答えは出ていない。戦争というのは、根底にあった理由と直接の理由、その両方によって起きることが多い。第一次世界大戦も例外ではなかった。
そう考えれば、1914年6月にボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボにおいて、オーストリア=ハンガリー帝国の帝位継承者フランツ・フェルディナント大公が、セルビアがバックアップする暗殺者に殺されたことで戦争が起きたと述べるだけでは、十分な説明とは言えない。