2022年10月号掲載
決定版マインド・コントロール
著者紹介
概要
日本では、宗教団体や霊能者などによる「マインド・コントロール」が、度々、世間を騒がせている。しっかりしていると見えた人が簡単にだまされ、取り込まれたりする。彼らはどんな手口で近づき、人の心を支配するのか? 長年、被害者救済に取り組む弁護士が、マインド・コントロールの実態をわかりやすく説き、警鐘を鳴らす。
要約
「マインド・コントロール」とは何か
日本では、カルト的なマインド・コントロールの事例が繰り返し起こっている。
「カルト」とは、統一教会(2015年から「世界平和統一家庭連合」に改称)やオウム真理教に代表される「熱狂的な宗教集団」という意味だ。
マインド・コントロールは、「自分以外の人や組織が常識から逸脱した影響力を行使することで、意識しないままに自分の態度や思想や信念などが強く形成・支配され、結果として物理的・精神的・金銭的などの深刻な被害を受ける状態」だ。
マインド・コントロールで、人格が一変する
私は、統一教会をはじめ、宗教団体や霊能者などが関与する数々の事件を被害者側の弁護士として手がけてきた。その中で、マインド・コントロールされた多くの人々と接してきた。
マインド・コントロールされた人の周囲からは、「人がまったく変わってしまった」という声が聞かれる。例えば、芯が強く非常にしっかりしていると見えた人が、霊能者と称する人の強い影響下にコロッと入ってしまう。
これは、実際にマインド・コントロールされている状態の人と接したことがなければ、理解しにくいだろう。心というか信念、考え方が凝り固まって、とりつく島がなくなる。親や親戚、友人などの意見を聞かないどころか、近しい人ほど最大の敵や悪魔のように思い込んでしまうのだ。
どんな場合が「法規範・社会規範からの逸脱」か
マインド・コントロールは、法規範や社会規範から逸脱した影響力の行使を伴っている。
例えば、マインド・コントロールを駆使する宗教的集団の目的が「教団にカネを貢がせること」ならば、社会通念からしておかしいと疑わねばならない。宗教の目的は、帰依する人々の心の解放や平安であって、カネ儲けではないはずだからだ。
「本人と親や家族を強制的に引き離す」「仕事を失う、学校をやめるなど、健全な社会生活を営めない」なども、法規範や社会規範から大きく逸脱しているだろう。
マインド・コントロールが行われている時は、その場その場、その時々で目的、方法、程度、結果を検討し、法規範、社会規範からの逸脱がないかどうか、厳しくチェックしていくしかない。
その結果、いくつもの点で法規範や社会規範から逸脱していると思われる時は、しかるべき対応を取る必要がある。例えば、その行為をしている団体の名前を公表し、社会的な監視を強め、被害者の救済に乗り出さなければならない。