2022年11月号掲載
アメリカとは何か 自画像と世界観をめぐる相剋
- 著者
- 出版社
- 発行日2022年8月19日
- 定価946円
- ページ数206ページ
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著者紹介
概要
ポピュリズムが頭をもたげ、保守派とリベラル派の対立が激しさを増す米国。今、この国の民主主義、アイデンティティが大きく揺らいでいる。なぜか? そしてこれは、米国の歴史においてどう位置づけることができるのか? 建国からの歩みをたどりつつ、深さを増す現代米国の分断状況を分析し、民主主義の行方を展望する。
要約
米国という「実験国家」の歩み
米国はしばしば、人類史における「実験国家」と称される。
米国という実験
独立以来、米国は中央への権力集中に懐疑的だった。中央に権力を与えると、かつての宗主国イギリスのように自分たちを搾取するかもしれない。かといって、各州がばらばらでは、通商や軍事の面でヨーロッパ列強に対して不利になる。
そこで建国の指導者たちは、国家としてのスケールメリットは活かしつつ、中央の権力を憲法で厳しく制限する立憲民主制を具現化していった。
その1つが「三権分立制度」である。中央の権力を3つの部門、すなわち行政府(大統領府)、立法府(連邦議会)、司法府(連邦裁判所)に分割し、相互に抑制と均衡を保つようにした。
加えて、各州に強い権限を与えることで、中央の権力を相対的に弱くした。各州が独自の憲法や軍隊を有し、税や選挙、教育などに関しても大きな裁量を持つ。こうした高度の独立性を有する諸州が緩やかに連なった連邦制国家が、米国だ。
すなわち、ヨーロッパがヒエラルキーを重んじるピラミッド型の社会だったのに対し、米国は市民主体の「自律・分散・協調」を重んじるネットワーク型の統治を試みた点で画期的だった。
連邦政府の有無が問われた時代
もっとも、米国という実験の歩みは決して平坦なものではなかった。
「全ての人間は生まれながらにして平等である」ことを「自明」とした独立宣言とは裏腹に、先住民や黒人、女性らが政治的・経済的に自由な市民ではなかったことは言うまでもない。
1861年には南北戦争が勃発。奴隷制の賛否が争点だったが、その深因は、連邦制の強化を求める北部諸州と、州権を重視する南部諸州の対立にあった。このように建国から南北戦争期までは、連邦政府の有無そのものが問われた時代だった。
米国流「リベラル」の誕生
南北戦争後、米国では資本主義が急速に発展。西部開拓が進み、「金ぴか時代」と称されるバブル期を迎えた。1893年の恐慌でバブルが弾けると、自由放任主義の弊害を是正すべく、反トラスト法の強化、累進的所得税の導入などが行われた。
しかし、第一次世界大戦後にバブル期が再び訪れる。享楽的な消費文化や都市文化が隆盛し、ジャズが「狂騒の1920年代」の象徴となった。