2022年12月号掲載
円安と補助金で自壊する日本 2023年、日本の金利上昇は必至!
著者紹介
概要
経済学者の野口悠紀雄氏は言う。日本の政策決定機構が“深刻な麻痺状態”に陥っている、と。物価高騰を問題としながら、金融緩和を続けて円安を放置するという、矛盾した経済政策を続けているからだ。本書では、現在、この国が直面している経済問題の本質を明らかにし、円安脱却に向け、金融政策の転換の必要性を訴える。
要約
突然襲ってきた物価高騰
2022年、物価高騰が日本を襲った。これは、21年秋から、輸入物価が急上昇したからだ。
その最大の要因は、ロシアのウクライナ侵攻で資源価格が高騰したことだ。原油価格は、2月の初めには1バーレル90ドル程度だったが、下旬には100ドルを超えた。
2番目の要因は、3月以降に、異常なスピードで円安が進行したことだ。3月に1ドル=115円台だったものが、7月には139円になった。
円安を止めることが必要
輸入価格の高騰は、原油などの原材料価格が高騰しているという海外要因による。しかし、円安がそれに拍車をかけていることは間違いない。
従って、緊急に必要なのは、円安を止めることだ。為替レートが変化すれば、輸入物価にすぐ影響する。そして、資源価格の高騰が日本に与える悪影響を最小限にとどめることができる。
これこそが、現在の事態に対処する最も重要な政策であり、最も確実な効果が期待される政策だ。
にもかかわらず、政府・日銀は何の政策もとっていない。それどころか、円安の進行を是認している。急激な円安が進行したのは、米国の金利上昇に対して日本が反応しないからだ。
円安を放置して、なぜガソリンに補助金?
政府は、物価対策として、2021年11月発表の緊急経済対策で、ガソリン価格に補助金を出すという対策を打ち出した。元売り業者に補助金を出し、小売価格を抑えるようガソリンスタンドに要請する、というものだ。
この対策には、問題がある。1つは、公平の観点からのものだ。ガソリン以外の様々な財、サービスの価格も急騰している。その中で、なぜガソリンだけが補助金の対象になるのか?
また、補助金を支出するには財源が必要だ。それは、結局は納税者が負担することになる。納税者からガソリン消費者への所得移転が、公平の観点から見て正当化できるかは、大いに疑問だ。
今回の措置は時限措置だとされているが、一度導入した補助策を撤廃することは難しい。さらに、同様の措置がガソリン以外にも広がる危険もある。