2023年3月号掲載
Econofakes エコノフェイクス
Original Title :ECONOFAKES (2021年刊)
- 著者
- 出版社
- 発行日2022年12月20日
- 定価1,760円
- ページ数235ページ
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著者紹介
概要
難解な数式で示される経済学は、科学的で、真実のように見える。だが、経済学者の著者は言う。「現代の主流の経済学は、ウソに満ち溢れている」。資本主義が自由と競争を促進する、公的年金制度は近い将来、高齢化によって崩壊する…。本書は、まことしやかに説かれる理論の“ウソ”を暴き、その背後に潜む“狙い”を明らかにする。
要約
「ノーベル経済学賞」など存在しない
経済学は、いまや私たちの人生のあらゆる領域にはかりしれない影響を与える存在となった。
しかし、経済学は必ずしも客観的ではない。経済学の定理の大部分は、個人の「こうあるべき」という主観的な判断にもとづいている。従って、経済学にはウソが山ほど存在する ―― 。
経済学者に「ノーベル賞」が授与される?
まず、「ノーベル経済学賞」自体がウソだ。毎年メディアは「ノーベル経済学賞」の受賞者を報じる。しかし、ノーベル経済学賞は存在しない。
アルフレッド・ノーベルは亡くなる際に、人類にとって大きな貢献をした者に賞金を出すという遺書を残した。具体的には物理学、化学などの分野、そして優れた文学、和平プロセスの促進に尽力した人たちへの、合計5つの賞だ。
ノーベルが経済学の分野を賞の対象にしようとした形跡はない。彼の子孫が、そう証言している。
実は、ノーベル経済学賞を作ったのは、ノーベルではなくスウェーデン国立銀行である。同銀行が1968年に創立300周年を祝った際、「アルフレッド・ノーベル記念経済学スウェーデン国立銀行賞」を創設した。それをノーベル賞の1つと誤解されるよう綿密に計画し、それに成功したのだ。
そのウソがどんな結果をもたらすか?
なぜ国立銀行がそのようなことをやったのか?
それを理解するためには、当時のスウェーデンの政治・経済の状況を知る必要がある。
1960年代後半、スウェーデン国立銀行は自国の社会民主主義政党と激論を繰り広げた。銀行は国立銀行を立法権や行政権から独立した機関として認める法令を要求。一方、社会民主労働党は財政や福祉政策が脅かされることを懸念し、反対した。
銀行が自らの主張を通すには、社会の支持が必要だった。つまり、金融政策や経済問題への対処法は技術的、中立的、科学的なもので、政治的論争の対象にはならない、と社会に納得させなければならなかった。そういう認識が浸透すれば、金融政策は中央銀行のみが行うべきだと認められる。
そこで銀行は、前述の賞がノーベルが創設した賞だと誤解されるよう周到に図った。そして経済学は、化学や物理学などに匹敵する科学であると人々に信じ込ませることに成功したのだ。