2023年5月号掲載

追跡  税金のゆくえ ブラックボックスを暴く

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著者紹介

概要

私たちの税金は、一体どこに消えているのか ―― 。先進国で最悪レベルの借金、社会保障費も毎年過去最高を更新。政策効果の乏しい歳出を削減し、効果の高い歳出に転換する「ワイズスペンディング(賢い支出)」は急務だ。だが、現状はそれには程遠い。毎日新聞記者がコロナ対策や東京五輪を例に、“血税”が浪費される実態を暴く。

要約

官僚も黙認する中抜き

 日本は、先進国で最悪の水準となる巨額の借金を抱える。そうした状況下で、我々が納めた税金はどこにいっているのか。この国の税金の行く先を追うと、様々な病巣が見えてきた ―― 。

コロナ禍を機に露呈した中抜きの実態

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、政府は給付金をはじめとする支援策を次々に投入した。

 例えば、収入が減った中小企業、個人事業主らに配る経済産業省の「持続化給付金」。この事務委託を巡っては、申請開始まもなく、一般社団法人「サービスデザイン推進協議会(サ推協)」から大手広告代理店の電通と、その子会社などに再委託と外注を繰り返す構造が浮き彫りになった。

 具体的には、まず経産省が電通や人材派遣大手のパソナなどで構成するサ推協に769億円で委託。一般競争入札だったが、事業者側に事前ヒアリングを実施しており、出来レースに近かった。

 サ推協は委託費の97%にあたる749億円を電通に再委託し、さらに電通は子会社に計645億円で事業を外注していた。結果として電通に残ったのは計104億円。電通と子会社ぐるみによる委託費の「中抜き」が疑われ、野党は国会で批判した。

 国会で明らかになったのは、電通子会社などからさらに複数社へ外注が繰り返されていたことだ。外注費の10%が「一般管理費」として利益に算入される仕組みが次々と明らかになった。

一般社団法人とは

 問題となった一般社団法人は、2000~08年に行われた「公益法人制度改革」に伴って誕生した法人形態だ。

 公益社団法人は内閣府の監督下にあるが、一般社団法人には監督官庁がない。税制優遇を受けながら、公益社団法人のように決算情報などの情報公開のルールが設けられているわけでもなく、組織数などの実態は正確に把握できていない。

 発足当時の協議会の理事はいずれも非常勤の8人が務め、この3社の関係者らが就任している。職員は21人で、同じく3社の関係者らが中心となって構成されていた。こうした特定の「企業連合体」に官庁が依存せざるを得ない実情は、はたして健全な予算執行といえるのか。

委託元の大半は経産省

 政府から一般社団法人への予算支出について調べると、2015~18年度の4年間で少なくとも1兆3500億円に上ることがわかった。これは、1年間で徴収する酒税やたばこ税を上回る規模だ。

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