2023年7月号掲載
脳を鍛えるには運動しかない! 最新科学でわかった脳細胞の増やし方
Original Title :SPARK (2008年刊)
- 著者
- 出版社
- 発行日2009年3月20日
- 定価2,310円
- ページ数345ページ
※『TOPPOINT』にお申し込みいただき「月刊誌会員」にご登録いただくと、ご利用いただけます。
※最新号以前に掲載の要約をご覧いただくには、別途「月刊誌プラス会員」のお申し込みが必要です。
著者紹介
概要
運動は、筋力や心肺機能を高めるだけではない。「脳を育ててよい状態に保つ」ことこそ、最高の効能だ! 体を動かせば、ストレスが減り、うつ、依存症が改善される。認知症の予防にもよい。この「運動と脳」の関係を精神科医らが、神経科学の視点から解き明かす。効果的な運動も紹介されるなど、実践的な内容のロングセラー。
要約
脳細胞を育てよう
運動すると、気分がすっきりすることは誰でも知っている。では、なぜ、そうなるのか?
運動により心臓から血液がさかんに送り出され、脳がベストの状態になるからだ。筋力や心肺機能を高めることは、運動の副次的効果にすぎない。運動をするのは、脳をよい状態に保つためなのだ。
運動は脳の機能を強化する
脳がどのように働いているか、そして、運動がどのように脳の質を向上させるのかを理解するには、その可塑性について知ることが欠かせない。
私たちの行動や思考や感情は、ニューロン(神経細胞)同士のつながり方によって決まる。さらに、私たちの思考や行動や環境がニューロンのつながり方にフィードバックし、それを変えていく。脳の配線は、絶えずつなぎ直されているのだ。
脳は、様々なタイプの無数の細胞からできていて、それらが互いにコミュニケーションを取りながら、私たちの思考や行動を決めている。
精神医学が重視するのは、脳のすべての活動を調整している「神経伝達物質」だ。すなわち、セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンである。
セロトニンは、気分、衝動性、怒り、攻撃性に影響する。ノルアドレナリンは、注意や知覚、意欲、覚醒に影響する。ドーパミンは、学習、報酬(満足)、注意力に影響する。運動をすると、この3つの重要な神経伝達物質が増える。
強いストレスを受けると、脳の何十億というニューロンの結合が蝕まれる。また、うつの状態が長引くと、脳の一部が萎縮してしまう。
しかし運動をすれば、神経化学物質(ニューロンの成長や機能調節など様々な役割を担う化学物質の総称)が放出されてこのプロセスを逆行させ、脳の基礎構造を強くできる。脳は筋肉と同じで、使えば育つし、使わなければ萎縮してしまう。運動をすると、脳の機能が根元から強化されるのだ。
こんな運動をしよう
では、どんな運動が一番いいのか?
お勧めは、心血管系と脳を同時に酷使するスポーツ(テニスなど)、あるいは10分ほど有酸素運動でウォーミングアップをした後にロッククライミングやバランスの訓練といった酸素消費量が少なく、技能を要する運動を行うというやり方だ。