2023年9月号掲載
無形資産経済 見えてきた5つの壁
Original Title :RESTARTING THE FUTURE:How to Fix the Intangible Economy (2022年刊)
- 著者
- 出版社
- 発行日2023年7月11日
- 定価3,080円
- ページ数366ページ
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著者紹介
概要
経済は停滞し、格差は拡大、そして競争は機能不全…。今日の世界経済は、様々な「壁」に直面している。これらの問題はなぜ生じているのか? 根本にあるのは、研究開発やブランド、ソフトウェアなどの「無形資産」が価値を持つ経済の台頭だ。“無形経済”が抱える課題の全貌を、金融・経済政策の専門家らが解説する。
要約
大経済失望
20世紀末、世界経済に対して楽観論が横行した。新しい技術と新しいビジネス手法のおかげで、人類の繁栄が大躍進を遂げると期待されていた。
だが、現実はまったく違うものとなった。過去20年にわたり、先進国経済のパフォーマンスは失望の連続だった。世界はかつてないほど豊かで、驚異的なテクノロジーが生活のあらゆる側面を変えつつある。それなのに経済的観点からすると、何かがおかしいのだ。
21世紀の世界経済は、次の5つの問題に直面しているのである。
①停滞
2020年の新型コロナ発生に伴う経済成長の低下は劇的なものだった。だが、それ以前も、豊かな国の経済はとても健全な状態とはいえなかった。
20世紀後半の大半で、先進国は平均で実質GDP成長率2%超が当たり前だった。ところが、21世紀になると、経済成長率は50%もの大幅な低下を見せた。2000~16年、アメリカでの1人当たり実質GDP成長は年率1%ほどだ。
世界金融危機以降の時期に注目すると、数字はさらに悪化する。2006~16年では、わずか年率0.6%しか成長していない。
低成長は今やあまりに普通のことになってしまったので、コロナ以前ですら専門家はそれが当然だと思っていた。だが、ほんの20年前や30年前と比べても、これはショッキングな数字だ。
この状況には驚かされる。通常、高い企業利潤は企業が投資から高い収益を得ているしるしだ。借入が安上がりなら、企業は資金調達をして、もっと投資するので、経済成長が回復する。
だが、金利は10年以上にわたって低いのに、成長は低いままだ。さらに、この低成長が起きているのは、技術が進歩していると広く信じられている時期だ。これが本当なら、低成長などあり得ないはずなのだ。
②格差
問題は、経済の規模だけではない。その分配方法も問題だ。特に今世紀に入ってから、頂点にいる金持ちとその他とのギャップが広がっている。
富裕国の物質的格差は、人々の資産と所得の両方に見られる。40年前と比べると、豊かな人々は、所有価額で見ても、稼ぎで見ても、貧困者との差がさらに開いている。この増加の相当部分は、1980年代と1990年代に起こった。その後、格差の一部の指標は拡大を続けたが、その他の指標は横ばいになった。