2023年11月号掲載

ジェンダー格差

ジェンダー格差 ネット書店で購入
閉じる

ネット書店へのリンクにはアフィリエイトプログラムを利用しています。

※『TOPPOINT』にお申し込みいただき「月刊誌会員」にご登録いただくと、ご利用いただけます。

※最新号以前に掲載の要約をご覧いただくには、別途「月刊誌プラス会員」のお申し込みが必要です。

著者紹介

概要

国連の「持続可能な開発目標」(SDGs)にも掲げられ、近年、注目を集めている“ジェンダー平等”。だが、男女間の格差は依然として大きい。労働、教育、育児…。様々な場面で顔をのぞかせる「ジェンダー格差」に、どう対処するか? 労働参加や教育機会、育児負担など、各種問題への解決策を、エビデンスをもとに考察する。

要約

ジェンダー格差を解消するには

 2015年に国連総会で採択された「持続可能な開発目標」(SDGs)には、17の世界的目標が示されている。その目標5に掲げられたのが「ジェンダー平等を実現しよう」だ。ジェンダーとは、社会・文化的に意味づけされた性別のことである。

経済学は何を問題としたか

 ジェンダーは政治だけではなく、経済学でも重要なテーマだ。1992年にノーベル経済学賞を受賞したゲイリー・ベッカーは、結婚などジェンダーにまつわる諸問題を経済学理論の枠組みで分析できることを示した。

 データを使った実証ミクロ経済学の分野では、経済学者による研究成果が多く出ている。男女格差解消にとってよかれと思った政策が、思ってもみない結果となった、という例はたくさんある。

 世界銀行首席エコノミストの研究に、インド農村で女性の賃金が上昇した効果を実証したものがある。賃金上昇で、女性の労働参加を促したことは予想どおりだが、その結果何が起こったのか。

 母親が外で働くようになったために、家事の担い手が女の子に移ったのだ。その結果、彼女たちの学校での学習時間が、男の子に比べて大きく減った。教育投資は、将来の稼ぎにつながるものだ。この結果は、ジェンダー格差解消を目指した制度が、かえって長期的な男女格差を生み出すことになりかねないことを示唆している。

平等が豊かな社会につながるのか

 ジェンダー平等の実現が原因となって、より豊かな社会という結果をもたらす、こうした因果関係を証明することはそれほど簡単ではない。

 因果関係を無視した議論に基づく政策は、思ってもみなかった結果を招き、本来の目的である、女性が活躍し、かつ幸せを感じられる社会を実現する上で、むしろデメリットとなる可能性もある。

 

女性の労働参加は何をもたらすか

 女性の労働参加と女性個人の「エンパワーメント」は、正の関係にあるとされている。エンパワーメントとは、自身の人生をコントロールできること、と広く理解されている。

この本の要約を読んだ方は、
他にこんな本にも興味を持たれています。

人新世の「資本論」

斎藤幸平 集英社(集英社新書)

日本経済 予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方

鈴木貴博 PHP研究所(PHPビジネス新書)

スモール・イズ・ビューティフル 人間中心の経済学

E・F・シューマッハー 講談社(講談社学術文庫)

ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論

デヴィッド・グレーバー 岩波書店