2023年11月号掲載
人口からみた宗教の世界史 ユダヤ教・キリスト教・イスラムの興亡
- 著者
- 出版社
- 発行日2023年8月24日
- 定価1,265円
- ページ数274ページ
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著者紹介
概要
今世紀末に、人口規模で世界最大の宗教になるといわれるイスラム教。その背景に何があるのか、他宗教との関係や、世界の宗教人口の推移を見ながら探っていく。今後ムスリム(イスラム教徒)の増加が見込まれる日本にとって、様々な宗教が混在する欧州におけるムスリムとの関わりなど、教訓となる話題も盛り込まれている。
要約
イスラム教が世界最大の宗教に
21世紀の世界では、宗教的にはイスラム人口が最も多くなると見られている。
その理由は、キリスト教信仰が支配的な欧米では少子高齢化により人口が伸び悩むこと、イスラムでは子どもを神の賜物として歓迎し子沢山を美徳とする傾向があること、またイスラムでは人為的な避妊が定着してこなかったことなどである。
米調査機関ピュー・リサーチ・センターによれば、2060年までにはイスラム教徒が30億人、キリスト教徒が31億人とほぼ同等になり、その後はイスラム教が世界最大の宗教になるという。
イスラム人口は日本でも増加する
日本でも、イスラム人口の増加が予想される。少子高齢化の日本では労働人口への切実な需要を背景に、2019年4月から施行された新制度「特定技能2号」により、高い技能をもつ外国人たちが期間の上限なしに滞在期間を更新できるという、事実上の永住システムが確立された。それに伴い、ムスリム(イスラム教徒)も今まで以上に多く日本に活動の場を求めることになる。
世界に目を転じても、人の移動が頻繁になったことや、中東や北アフリカのイスラム地域の紛争や貧困などの社会的背景から、移民や難民としてムスリムが欧米などの先進国に流出し続けている。
欧州におけるイスラムとの関わり
欧州では、文化や慣習が異なるムスリム移民や難民の増加が、彼らの排斥を唱える極右勢力の台頭をもたらした。ムスリム移民が疎外感から欧州域内でテロを起こしたこともあったが、他方で、ドイツなどでは労働力不足を補うためにトルコ人などのムスリム労働者に頼ってきた。
様々な宗教文化が混在する欧州におけるイスラムとの関わりは、ムスリム人口の増加が見込まれる日本の将来にも教訓を与えてくれる。少子高齢化が顕著な日本は、外国人労働者に頼らなければならない。彼らを隔絶させるようなことはあってはならないし、また日本社会は彼らを円滑に取り込んでいくことが課題となっている。
イスラム人口はなぜ増加したか
ムハンマドがイスラムを創始した7世紀頃から、ムスリムは次第に増えていったが、彼らは既成の秩序の中で異端者として扱われた。宗教や社会の改革を唱えるイスラムは、既得権益を持つメッカの為政者たちにとって不都合なものであった。
メッカ社会のイスラムに対する敵対意識や様々な差別に対して、ムスリムは暴力によって自らの主張を訴えたわけではない。彼らは布教や説得などの手段を通じて次第に改宗者を増やしていった。
平和的性格をもつイスラム
イスラムは、アブラハム、モーセ、ソロモン、洗礼者ヨハネ、キリストを継承する宗教で、その教義にはモーセの十戒の影響もあり、殺人、姦淫、窃盗を禁じている。イスラムの聖典『クルアーン』の中では、「平安(平和:アラビア語でサラーム)」は重要なテーマである。