2023年12月号掲載

インド ―グローバル・サウスの超大国

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著者紹介

概要

近年、国際的に存在感を増す“新興国の盟主”、インド。人口は中国を抜いて世界一、GDPは英仏をしのぎ世界5位。そして、非同盟中立の外交。もはや、この国を抜きに国際政治は語れない。そんな“最注目国家”を、インド経済研究の第一人者が分析した。宗教や経済、外交、格差の問題等々、同国を知るための情報が満載だ。

要約

多様性のインド

 「多様性の中の統一」 ―― 。インドを一言で言い表す時、よく使われる言葉である。

4つのアイデンティティ

 インド人は、「出身地、言語、宗教、カースト」という4つのアイデンティティで規定される。例えば、コルカタ出身でベンガル語を話し、ヒンドゥー教を信じるバラモン(司祭)といった具合だ。インドを理解するには、これらのアイデンティティを構成する要素を理解することが必要だ。

 インドの国土面積は328.7万km²で、世界第7位。言語は、連邦レベルの公用語であるヒンディー語以外に、州レベルで21の公用語がある。

宗教とカースト

 インドは宗教の坩堝の国ともいわれる。インドの宗教の比率(2011年)は、ヒンドゥー教徒79.8%、イスラム教徒14.2%、キリスト教徒2.3%、仏教徒0.7%などとなっている。

 インド人のアイデンティティにとってとりわけ重要なのは、カーストである。カーストというのは本来ポルトガル語で、「バラモン(司祭)、クシャトリア(王族・武士)、ヴァイシャ(商人)、シュードラ(農民・サービス)」の4つの階層制度を、インド人はカーストではなく「ヴァルナ(四種姓)」と呼ぶ。そして、この4つの階層の下に「ダリット(不可触民)」と「アディヴァシ(先住民)」と呼ばれる2つの最下層が存在する。

 この4つのヴァルナとその下のダリットの集団は、「ジャーティ」と呼ばれる多数の集団に細分化されている。インドではこのジャーティが、長年にわたって世襲的な職業に結びつけられてきた。

 そしてジャーティの職業を代々継承するため、婚姻関係も伝統的に同じジャーティ間で結ばれてきた。そのため異なるカースト間の婚姻は奨励されず、とりわけ農村部ではいまだにそれが顕著だ。

 インドでは、高級官僚や学者、ITエンジニアなどの知的エリートは、バラモンが圧倒的に多い。一方、インドの財閥にバラモンは極めて少なく、商業カーストのヴァイシャが中心である。

モディ政権下のインド経済

 インドは、世界第5位の経済大国である。2022年の名目GDPは3兆3800億ドル(439兆4000億円)で、米国、中国、日本、ドイツに続く。

内需主導型の経済

 世界最大の人口を抱えるインドの強みは、巨大な中間層の存在である。インド人の約3人に1人が年収50万~300万ルピー(80万~480万円)の世帯収入を得る「中間層」に該当する。

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