2024年2月号掲載
愛される企業 社員も顧客も投資家も幸せにして、成長し続ける組織の条件
Original Title :Firms of Endearment:How World-Class Companies Profit from Passion and Purpose (2014年刊)
- 著者
- 出版社
- 発行日2023年12月18日
- 定価2,970円
- ページ数445ページ
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著者紹介
概要
自社の利益を追求するだけでは、激変する世界を生き残れない。すべてのステークホルダーと密接な関係を築くことが必要だ ―― 。企業存続のカギは「心のつながり」の構築にあると説いた書である。顧客に愛され、従業員が満足し、株主にも利益をもたらす。そんな“愛される企業”の思考と行動を、多数の企業事例から導き出す。
要約
愛情をベースとしたビジネス構築
愛着、喜び、誠意、共感、思いやり…。愛情を表す言葉はいろいろある。少し前までは、こうした言葉はビジネスの世界で受け入れられていなかった。それが変わりつつあり、今はこうした言葉を難なく受け入れる企業が増えている。
「愛される企業」とは?
だから、私たちは「愛される企業」と造語した。それは簡単にいえば、すべてのステークホルダーの関心事を戦略的に調整することで、ステークホルダーに愛されている企業のことだ。
他のステークホルダーを犠牲にして利益を得るのではなく、みんな同じように豊かになる。愛される企業はステークホルダーを喜ばせ、愛着を感じてもらい、ロイヤルティにつながるやり方で、すべてのステークホルダーのニーズに応えている。
愛される企業の共通点
愛される企業には、その核となる価値観や経営方針の特徴に共通点が見られる。例えば ――
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- ・経営陣の給与があまり高くない。
- ・給与や福利厚生などが同業種内の水準と比べてかなり手厚い。
- ・離職率が業界平均と比べてはるかに低い。
- ・従業員に権限を与え、あらゆる面で顧客に必ず十分満足してもらえるようにしている。
- ・自社の製品やサービスの熱心なファンを雇うようにしている。
- ・顧客への心からの愛を伝え、心の深いレベルで信頼関係を結んでいる。
- ・同業他社と比べて、マーケティングにかける費用がはるかに少ないのに、顧客満足度と顧客維持率がはるかに高い。
- ・サプライヤーを真のパートナーと考え、両社がともに前進できるよう協力している。
- ・企業文化を、最大の強みであり、競争優位になる重要なもの、と考えている。
株主かステークホルダーか
愛される企業の際立つコアバリューの1つが、どのステークホルダーも公平に満足させることだ。
例えば、小売業のコストコは同業他社と比べて給与水準がかなり高く、しかも福利厚生なども充実している。競合企業より多く支払っていながら、従業員1人当たりの売上も利益もかなり大きい。これは圧倒的な効率の良さと、非常に低い離職率のおかげだ。従業員は高い賃金で満足して働いているから、モチベーションも生産性も高い。
それなのに、コストコは投資家の利益を奪い、従業員を甘やかしていてけしからん、と考える金融アナリストが多い。例えばドイツ証券のビル・ドレハーがこう述べている。「投資家の観点からいえば、コストコの福利厚生は手厚すぎる。公開会社は株主のことを第一に考える必要がある」。
ドレハーの考え方は間違っている。コストコの前CEOジム・シネガルは、従業員待遇が「手厚すぎる」理由を次のように説明している。
「従業員にしっかり支払っているのは、そうするのが正しいからだけでなく、業績につながるからです」「最低賃金しか払わないのは間違っています。適切な利益配分ではないからです。従業員は常に不満を感じ、離職者が増えます。おまけに、店長は代わりとなる人材の採用ばかりに時間をとられて、店の運営がおろそかになります。私たちはむしろ、従業員に店を運営してもらった方がいい、と考えています」
実際、コストコは優良株であり続けている。