2024年6月号掲載
世界を変えた8つの企業
Original Title :FOR PROFIT (2022年刊)
- 著者
- 出版社
- 発行日2024年4月30日
- 定価3,080円
- ページ数436ページ
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著者紹介
概要
「企業」という存在は、常に世界の行方を左右してきた。古代ではローマを戦争の勝利に導き、20世紀にはフォードが米国民に夢を与えた。そして今、フェイスブックが民主主義の形を変えつつある。彼らの姿から見えてくるのは、単なる利益追求に終わらない企業のあり方だ。歴史を振り返り、改めてその“存在意義”を検証する。
要約
企業が動かしてきた世界
企業の歴史に一貫して見られる特徴が1つあるとしたら、それは世界の動向に常に多大な影響を及ぼしてきたということだ。
ローマを救った3つの企業
前215年、地中海世界の大国であるローマとカルタゴの間で熾烈な戦いがあった。戦線はスペインからギリシャまで延びた。この頃、カルタゴの名将ハンニバルは大軍を率いてローマに攻め込み、ローマ軍は桁外れに大きな損害を被った。
実はこの絶体絶命の状況に追い込まれたローマ軍が、その後、カルタゴ軍を破ることになる。この出来事であまり知られていないのは、ローマが戦争を続けることを可能にした資本家の役割だ。
ハンニバルが暴れているさなか、スペインのローマ軍からローマ元老院に悪い知らせが届く。
「軍の物資が不足しているのですぐに送ってほしい。さもなければスペイン全土を失うことになる」
この時、ローマの国庫も底をつきかけていた。そこで元老院は窮余の策として市民に懇願した。国庫が回復したら償還するので、私費でスペインにいる軍隊に食料や装備を送ってほしい、と。
この要請に対して、3つの企業、計19人から協力の申し出があった。彼らが見返りに求めたのは、兵役の免除と、船に積んだ物資が敵の攻撃で失われた場合の弁済だけだった。
スペインのローマ軍は物資の供給を受けられたおかげで、カルタゴ軍との数度の会戦を制することができた。この連勝の結果、スペインのほぼ全勢力がカルタゴを見限ってローマの側につき、最終的にローマ軍はカルタゴ軍を破ることになった。
これは、共和政ローマの歴史において注目される出来事だった。破綻寸前だった政府を、有力な企業の一団が救済したのだ。
フォードが可能にした“夢”
1914年1月5日、ヘンリー・フォードは電撃的な発表を行った。今後、フォード・モーター・カンパニーは全従業員に1日5ドルの賃金を払うという。これはそれまでと比べ2倍以上の額だった。
フォードがこのような決定を下した動機の1つは、自動車の組み立てラインのスピードが向上し、多くの作業員が必要だったからだ。市場ではT型フォードが圧倒的な人気で、作れば作るだけ売れそうだとフォードは踏んだ。