2024年6月号掲載
日本の税は不公平
- 著者
- 出版社
- 発行日2024年4月8日
- 定価1,210円
- ページ数285ページ
※『TOPPOINT』にお申し込みいただき「月刊誌会員」にご登録いただくと、ご利用いただけます。
※最新号以前に掲載の要約をご覧いただくには、別途「月刊誌プラス会員」のお申し込みが必要です。
著者紹介
概要
政治家は巨額の非課税資金を受け取り、国民は重い税負担にあえぐ ―― 。自民党の裏金事件は、日本の税制がいかに“不公平”であるかを広く知らしめた。高齢化により今後、国民の負担は増す。そうした中、公平な税制こそ何より重要という著者が、少子化対策から介護保険、NISAまで、あるべき税制・財源について縦横に語る。
要約
気がつけば、負担増
自民党派閥の裏金問題が暴露され、国民の怒りが爆発している。
国民は何に怒っているのか? 受け取った資金を政治資金収支報告書に記載しなかったことか? それもあるが、巨額の資金を受け取りながら、税を払っていないことに怒っているのではないか?
仮に会社が給与やボーナスとは別に、特別の手当を現金で出してくれたとしよう。この手当が、課税の対象であることは明白だ。
派閥からの裏金は、実質的にはこれと同じものだ。それにもかかわらず、政治資金というだけで課税を免れている。なんと不公平なことだろう。
歴史上多くの革命が、税に対する不満を発端として起きた。もし、今回の事件がうやむやのまま終わってしまうなら、日本に未来はない ―― 。
日本の国民負担率は50%に近づいている
現在の日本は、高負担社会だ。国民負担率(租税負担と社会保障負担の合計の国民所得に対する比率)は、46.8%になっている。そして、この比率は、高齢化の進展でさらに高まらざるをえない。
ただし、現在の日本国民は、高い負担率に見合った国のサービスや社会保障の給付を受けている。だから、国民負担率が高いのは、必ずしも悪いことではない。実際、ヨーロッパでは国民負担率が50%を超えている国が多い。
ただ、将来も確実にサービスを受けられればよいが、実際には、それに関して不安要因がある。とりわけ、人手不足のために、医療や介護で必要なサービスが受けられるかどうかわからない。
原則が平気で無視される
負担に関するもう1つの問題は、医療保険や介護保険での自己負担が増えていくことだ。自己負担の増加は目につきにくい形で生じる。このため、安易な財源として乱用される危険がある。
医療費については、すでに2022年度から、2割負担者の範囲が拡大されている。2023年には、介護保険の自己負担の増加も提案された。このままいけば、無原則に負担が増える危険がある。
ステルス負担増:いつの間にか負担が増加
事実、少子化対策予算について、無原則負担の問題が発生している。岸田文雄首相は、「負担の増加なしに少子化対策が実現できる」とし、医療保険制度に「子育て支援金」という制度を新設した。では、どうやってこれを賄うのか?