2024年8月号掲載

日本の財政 ――破綻回避への5つの提言

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著者紹介

概要

日本の財政が悪化の一途を辿っている。コロナ禍や資源価格の高騰を受けて大型の財政出動を行ったこともあり、2023年度の国債残高は1068兆円になるという。財政破綻の恐れはないのか。わが国の財政政策を検証し、危機的状況を示す。著者は言う。これまで「何とかなってきた」ことは、今後もそうであることは意味しない、と。

要約

日本の現状と課題

 日本の財政が岐路に立っている。国の借金である国債残高は、2023年度に1068兆円に達すると見込まれている ―― 。

財政出動を繰り返す日本

 コロナ禍はほぼ終息した。だが、財政への歳出拡大圧力は続いている。ロシアのウクライナ侵攻以降、石油などの資源価格が高騰し、政府は2022年1月から石油元売り会社へ補助金の支給を始めた。また、政府は2023年1月には約3兆円を投じて電気・ガス料金の負担軽減にも乗り出した。

 こうした補助金は緊急措置としてはやむを得ない。だが、節度なく対象を拡大したり、期限を延長したりすることは財政状況を悪化させかねない。

 本来、政策は経済の状況に応じて適宜変えていくべきものだが、政策転換、つまり修正、変更が利いていない。何故こうなるのか?

 それは平時から財政規律を欠いてきたことによるだろう。財政規律とは、財政へのコントロールを意味する。つまり、非常時には財政の規模を機動的に高め、平時には元の水準に戻せることだ。日本の財政は、このコントロールができていない。

財政政策のデフレマインド

 財政出動を正当化してきたのが、デフレによる経済の低迷だ。2023年11月の経済対策では3兆円規模の所得税と住民税の定額減税が行われた。具体的には1人当たり所得税3万円と住民税1万円の計4万円を減税する。実施は2024年6月。

 岸田総理は「デフレ完全脱却」を謳ってきたが、足元の経済はすでにデフレが解消しつつある。日本銀行によれば、日本経済の「需給ギャップ」(需要と供給力の差)が23年4~6月期にマイナス0.07%だった。内閣府の推計では同時期プラスに転じている。インフレ率(消費者物価指数)も2%を超えてきた。日本銀行は10月公表の「経済・物価情勢の展望」において消費者物価指数の前年度比上昇率の見通しを23年度、24年度ともに2.8%とした。

 このように経済はインフレ基調に転じつつある。しかし、支援(補助金)ありきなど、財政政策のスタンスはあまり変わっていないように思われる。

財政政策の可能性と幻想

 日本の財政を巡っては、2010年代以降、「奇策」が盛んに論じられてきた。

現代貨幣理論(MMT)

 近年、流行したのが「現代貨幣理論(MMT)」である。提唱者はニューヨーク州立大学のケルトン教授で、「通貨を発行する権限があり自国通貨建て国債を発行する政府は、財政政策において財政赤字や債務残高などを考慮する(財政再建に努める)必要はない」とする。

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