2024年8月号掲載
フランスの高校生が学んでいる10人の哲学者
Original Title :LES DIX PHILOSOPHES INCONTOURNABLES DU BAC PHILO (2012年刊)
- 著者
- 出版社
- 発行日2024年2月8日
- 定価990円
- ページ数185ページ
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著者紹介
概要
哲学の教鞭をとる著者が、代表的な西欧哲学者10人を紹介。なぜ、プラトン哲学は理想主義と呼ばれるのか。彼の弟子アリストテレスが師の考えを批判したわけは? デカルトの名言「われ思う、ゆえにわれあり」はいかにして誕生したのか…。賢人らの思想をわかりやすく説いた教科書として、フランスでベストセラーとなった1冊。
要約
プラトン
哲学とは、喜びと切っても切り離せないものだ。考えることで力を得て、強く生きていくことは喜びなのである。ここでは、プラトンをはじめ有名哲学者の言説を紹介しよう。
*
プラトンは、「イデア(=理想)の天界」を作り出した。プラトンによると、私たちの住むこの世界は「本当の世界」ではない。本当の世界は、私たちの頭上、「イデアの天界」にある。
プラトンは、天に理想を求める。プラトン哲学が理想主義と言われるのはこのためだ。
「可感界」と「可想界」
プラトンの思想はまず、私たちが生きる「可感界(見たり触ったりできる具象)」と、永遠の命を持つイデアが生きている「可想界(頭の中にしかない抽象概念)」を区別することから始まる。
可感界において、人はそれぞれに異なる。臆病な者、勇敢な者、悪人も善人もいる。だが、イデアの世界における人間の概念は1つしかない。こうあるべき人間というただ1つの理想的な人間像しか存在しないのだ。
可感界は多種、多様、偶発性、相対性を特徴とする、非本質的な世界である。例えば、それぞれに異なる台があるとする。応接間の低めのテーブル、背の高いテーブル、美しいテーブル…。
一方、可想界は一貫性、必然性、普遍性が価値となる本質的な世界で、ここでいう概念は本質と言い換えられる。つまり、ここで問題なのはテーブルという概念であり、「物を載せられる平面に脚がついているもの」というテーブルの定義だ。
テーブルとは何かを知るために、この世に存在する台状のものをすべて思い浮かべる必要はない。ただ「上を見る」、つまり、可感界の煩雑さ、複雑さから遠ざかり、自身に問いかけ、テーブルとは何かを考えてみるのだ。
そして次に問題になるのが、可感界と可想界の関係だ。私たちは具象にあふれる下界で「イデアの天界」にある永遠の価値観に従って生きている。
では、どうやって自分の行動が天界のルールに合致しているか判断すればよいのか? プラトンは『饗宴』の中で次のように答えている。