2024年9月号掲載

イスラム世界に平和は来るか? 抗争するアラブとユダヤ、そしてイラン

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  • 著者
  • 出版社
  • 発行日
    2024年6月25日
  • 定価
    2,200円
  • ページ数
    247ページ

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著者紹介

概要

イスラエルと衝突するハマス、西側と対立するイラン…。数々の紛争が、現在進行形で起きている中東地域。根源には何があるのか? この地の歴史的・民族的背景、紛争の背後に潜む一神教の思考などを踏まえ読み解く。文化や慣習など、日本とはまるで異なる世界観を持つイスラム世界。その実像を浮き彫りにした1冊だ。

要約

中東イスラム世界の政治事情

 一般に、近代国家の成立時には強いナショナリズムが発生する。日本もそうで、それまであった藩意識や身分意識が急速に払拭され、「日本人意識」や国民としての連帯感が生まれた。

アラブには2つのナショナリズムが存在する

 ここで興味深いのは、日本人が「ナショナリズムは1つだ」と信じていることだ。なるほど日本の場合はそうである。だが、アラブは違う。当地にはナショナリズムが2つある。

 例えば、1人のシリア人アラブがいるとする。この時、アラブのアイデンティティーを優先し、「俺はアラブだ、しかる後にシリア人だ」とした場合、彼は“アラブ・ナショナリスト”と考えられる。一方、彼がシリア人のアイデンティティーを優先し、「俺はシリア人だ、しかる後にアラブだ」とした場合、彼は“国家ナショナリスト”だ。

 つまり、アラブ諸国には民族優先と国家優先の2つのナショナリズムが存在し、しかも両者は仲が悪い。これにイスラム教を至上とする宗教原理主義が加わって、アラブの政治潮流は三つ巴の様相を呈している。中東政治がわかりにくいのは、ほぼこの事実に依っている。

 今日、アラブ・ナショナリズムは、その提唱者たるナセル(エジプト大統領)や、その後継者たち、すなわちムアンマル・カダフィ(リビア)、サッダーム・フセイン(イラク)が殺害されたことから、命脈は尽きている。

 従って、現在は国家ナショナリズムとイスラム主義の衝突がアラブ政界の中心になっている。

アメリカの制裁、イランのタコ足戦略

 イランは1979年のイスラム革命以来、アメリカ・イスラエルと対峙している。また、核兵器開発が暴かれて以来、アラブ諸国との緊張も高まり、戦争寸前になることもあった。

 では、イランはこれにどう対処しているのか。

 これが、俗に“オクトパス戦略”と呼ばれるものだ。タコ足の如く八方に手を伸ばし、革命の輸出をしているからだ。この脅威はあなどりがたく、イスラエルはハマスやヒズボラからミサイル攻撃を受け続けている。そしてこれらの背後にはイランの革命防衛隊が控えている。となれば、イスラエルはいずれイラン本国と事を構えることになろう。とりわけ、イランの核開発が佳境に入った場合、タコ頭への攻撃は必須となる。

アラブがイスラエルに負け続ける理由

 1948年、ユダヤ人はイスラエルを建国した。だが、それを契機に、その建国を認めない周辺アラブはイスラエルと4度の中東戦争を引き起こし、そのたびに負けている。

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