2024年12月号掲載

プーチンの帝国論 何がロシアを軍事侵攻に駆り立てたのか

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著者紹介

概要

2022年2月に始まった、ロシアによるウクライナ侵略。2年半たった今も、終戦の兆しは見えないままだ。かつて共にソビエト連邦(ソ連)を構成する共和国だった兄弟民族が、なぜ争うことになったのか。日経新聞の元モスクワ支局長が、ロシアという国の歴史を繙きつつ、侵略に踏み切ったプーチン大統領の思想を読み解く。

要約

「ロシア世界」の守護

 ロシアによるウクライナ侵略は、2年半が過ぎても、なお終わりが見えない。ウクライナとロシア軍双方の犠牲者も増え続けている。

 なぜ、兄弟民族が殺し合う悲劇が起きたのか。何がプーチン大統領を戦争へと駆り立てたのか。

 今回の侵略には、ロシアという国家の姿や歴史が深く関わっている ―― 。

「ロシア世界」とは

 「米欧はすべてのロシア世界に対して、全面的な戦争を宣言した。このことをいまや誰も隠していない」。ウクライナへの軍事侵攻が長期化の様相を強めていた2022年5月27日、ロシアのラブロフ外相は会合でこう言い放った。

 「ロシア世界」という言葉には「ロシア人の世界」という含意がある。そして、旧ソ連諸国や欧州周辺国にとっては、ロシア民族主義の危うい響きがある。

 その理由の1つは、この言葉によって周辺国が大国ロシアの支配下や占領下に置かれた歴史や抑圧の記憶を思い起こさせられることにある。特に2014年のクリミア半島併合の後、ロシアの保守派の間で「ロシア世界」という言葉の使用頻度が増え、周辺国は警戒を強めざるをえなかった。

 例えば、ロシアの有力紙「RBK」は2021年2月、ペスコフ大統領報道官がウクライナについて「ロシア世界の一部だ」と呼んだ、と伝えた。その上で「(ロシアとウクライナの)文化的結びつき、歴史的結びつき、共通の起源を否定するのはひどくばかげたことだろう」と発言した。

 これは、プーチン政権内で、ウクライナはロシア世界に含まれるという共通認識が存在した可能性を示している。

「ロシア世界」は神の創造物

 「ロシア世界とはとても多面的で、巨大なのだ。それを造ってきたのは我々ではない。我々の使命はそれを強化し、発展させ、わが国民と全世界にとって魅力あるものにしていくことにある」

 プーチンは「ロシア世界」を神の創造物だとみなす。その「ロシア世界」を強化し、発展させることで、世界に貢献していきたいと表明している。

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