2025年3月号掲載

二兎を追う経営 トレードオフからの脱却

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著者紹介

概要

企業経営には、常に様々な「トレードオフ」(二者択一)がつきまとう。低価格志向か高級路線か、利益を追求するか社会貢献を重視するか…。多くの経営者は、ここで片方を諦める。だが長年、経営戦略を研究する著者によれば、両立は可能。あえて「どちらも」追い求め、成功した企業の分析を基に、“二兎を追う”戦略を説く。

要約

コストvs.品ぞろえ

 数年前、『トレードオフ』という本が話題となった。この本には「手軽さ」を追求して成功したiPod、「上質」を追求して成功したiPhoneなど、様々な事例が挙がっている。

 この本の著者は、手軽さと上質とはトレードオフ(二者択一)であり、どちらか一方に努力を集中させるべきだという。

 二兎を追うのではなくどちらか一方に努力を集中させるというやり方(一兎戦略)は、これまで多く提案されてきた。しかし本書では、あえて二兎を追う方法(二兎戦略)を検討しよう ―― 。

アパレル小売りが直面するトレードオフ

 衣料品は、流行や気候によって売れる時期が決まっている商品である。あるシーズンの服は、その時期を過ぎると、まったく売れなくなる。

 この場合、売れ残りを返品できる委託販売であれば、損失は卸やメーカーが分担する。損失分はマージンに載せられるので、商品価格は高くなる。

 それに対し、商品の企画・開発や製造、販売を一貫して手がけるSPA(製造小売り)は、中間業者のマージンを除くことでコストを下げ、低価格で販売できる。ただし、売れ残りのリスクは小売り自身が負うので、できるだけリスクを抑制しようと考える。ゆえに、流行り廃りのあるファッション商品よりは、定番品を主に扱うようになる。

 つまり、アパレル小売りにとって、コストと品ぞろえはトレードオフ関係にあるのだ。

 1990年代後半にフリースで急成長した時のユニクロは、カジュアル・ベーシックに絞った品ぞろえをし、もっぱら低価格(コスト)を追求していた。一兎戦略をとっていたのである。

ZARAの二兎戦略

 ZARAは、二兎戦略を実現するための多くの工夫を凝らしている。例えば、流行を素早くフォローしている。世界各地の市場にデザイナーを配し、市場の動向を常に把握することで、年間で2万5000点のアイテムをデザインする。

 また、基本的には少量生産・売り切れ御免である。ZARAでは、商品の4分の3は3~4週間ごとに取り替えられる。買い物客は「気に入った商品があったら、その時買わなければならない」と考えるので、売れ残りが少なくなるのである。

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