2025年4月号掲載
イスラエルの自滅 剣によって立つ者、必ず剣によって倒される
- 著者
- 出版社
- 発行日2025年1月30日
- 定価1,034円
- ページ数254ページ
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著者紹介
概要
2023年10月、イスラム組織ハマスがイスラエルに奇襲攻撃を仕掛けた。これを機に勃発した「ガザ戦争」は犠牲を伴いながら拡大する一方だ。なぜ、戦いは終わらないのか。国際政治に詳しい著者がその根源に迫った。国際的孤立を深めつつもイスラエルが戦争を続ける目的、米国との関係などを詳説し、その危機的展望を示す。
要約
周囲を敵に囲まれたイスラエルの現在
イスラエルは20世紀半ばの建国以来、戦争を繰り返してきた。その強引な国づくりが今、多くの点で綻びを見せている ―― 。
イスラエル周辺の外的な脅威
2023年10月7日、パレスチナのガザ地区を統治するイスラム組織ハマスは、イスラエルに奇襲攻撃を仕掛けた。この攻撃に対し、イスラエルは報復を行い、「ガザ戦争」が勃発した。
それ以来、戦線は拡大する一方だ。イスラエルはレバノン、イエメン、シリア、イラクなどからの攻撃にも直面している。かつて旧式の兵器を使用していたこれらの敵は、ロシアや中国、イランという軍事技術が進んだ国の協力を得て、兵器の技術や性能も格段の進歩を遂げている。
例えば、イエメン北部を実効支配するフーシ派は、24年7月、イスラエルの商都テルアビブを自爆型ドローンで攻撃。10人が死傷した。フーシ派のドローンは、かつてミサイルやドローンを無力化していたイスラエルの防空システムをくぐりぬけ、その綻びを露呈させた。
イスラエル社会を不安定化させる内的な脅威
こうした外的な脅威に加えて、内的な脅威といえるのが、ネタニヤフ政権の動静である。
ネタニヤフ首相は2019年に汚職の容疑で起訴され、20年から裁判にかけられている。彼は、首相職にある限りは有罪での拘留を免れると判断し、ハマスに囚われた人質の解放よりも首相職を維持できる戦争の長期化の方を望んでいる。
また、イスラエルを国内から動揺させる勢力として、極右政党・集団の存在がある。
現在のネタニヤフ政権は極右政党と連立している。極右政党が政権から離脱すれば、政権が崩壊してネタニヤフは首相職の辞任を余儀なくされる。そのため、ガザ戦争の継続を主張する極右閣僚たちの主張を採用せざるを得ない状況にある。
さらに、影響力を増しているユダヤ教の超正統派の存在がある。超正統派はユダヤ教徒の中でもとりわけ厳格に教義や戒律を守って暮らす人々で、子どもを多く産み、労働することなく、国民皆兵の体制下で軍隊に入ることも拒否している。
ネタニヤフ政権は超正統派の政党とも連立しているものの、彼らの多くは民主主義的価値観を信じてもいない。職業的にはほとんどが聖職者になるため、彼らの生活の保障は国の財政支援によって行われており、莫大な軍事費を支出する現在のイスラエルには大きな負担となっている。