2025年5月号掲載
トランプ2.0 米中新冷戦 予測不能への備え方
著者紹介
概要
2025年1月、米国大統領に返り咲いたトランプ氏。就任早々、大統領令を乱発して世界を揺さぶっている。第2期政権では何をするのか? 「予測不能」といわれる彼の言動の狙い、新政権の特徴などを、経済安保の専門家が解説。さらに「米中新冷戦」といわれ、半導体などを巡って加熱する、米中関係の今後を見通す。
要約
トランプ2.0に身構える世界
「内向き」「保護主義」「孤立主義」「予測不能」といわれるドナルド・トランプ氏が大統領に復帰して、就任直後から世界に衝撃が走っている。
トランプ政権を支える「3派連合」
予測不能といわれる中でも、トランプ政権の「本質」は見えてきている。一言で言えば、大統領を支える閣僚たちは「3派連合」だ。
- ①「MAGA(米国第一)派」(内向き・保護主義・孤立主義):J.D.バンス副大統領、スティーブン・ミラー次席補佐官ら。
- ②「親ビジネス(小さな政府)派」(減税・規制緩和):スコット・ベッセント財務長官、ハワード・ラトニック商務長官ら。
- ③「外交タカ派」(力による平和):共和党主流のマルコ・ルビオ国務長官、マイケル・ウォルツ国家安全保障担当大統領補佐官ら。
トランプ大統領はあえて閣僚たちを競わせて、状況に応じて彼らを使い分ける。そして最後は自分が決める。今後の政策については「どの派の誰がトランプ大統領に信頼されるか」が注目点だ。
これまで政策全般を仕切っていたのは、MAGA派の中心人物の1人であるミラー氏だ。
対中政策は、ルビオ国務長官など、外交タカ派が中心になる。対中強硬派として有名で、中国の軍事力拡大への危機感を強烈に持っている。
親ビジネス派で、商務長官に就いたのは米投資銀行CEOのラトニック氏だ。製造業の国内回帰を進めるが、その手段に高関税も視野に入れている。
看板政策「関税」を巡る激しい綱引き
トランプ政権の看板政策「関税」を巡っては、MAGA派と親ビジネス派の綱引きが激しい。
MAGA派は関税の目的を経済的なデカップリング(分断)としており、輸入と貿易赤字を削減するのが狙いだ。第1期と同様、今回も鉄鋼・アルミへの25%の関税賦課を主導した。同盟国に関税を課すことも辞さない。
一方、親ビジネス派は、関税はあくまでディール(取引)を目的にしている。そのため、MAGA派が過激な関税政策を打ち出すのを牽制している。
トランプvs「オール・ワシントン」の確執
前回のトランプ政権で国務長官を務めたマイク・ポンペオ氏らは、今回入閣していない。なぜか。
一言で言えば、トランプ大統領は、第1期ではこうした取り巻きに「自由にさせてもらえなかった」との思いが強かったのだ。