2025年5月号掲載

終末格差 健康寿命と資産運用の残酷な事実

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著者紹介

概要

2019年、「老後資金2000万円問題」が大きな議論を呼んだ。だが、少子高齢化が進む今日、本当にこの金額で十分なのか。老後生活に向けて何をどう備えるべきか。野口悠紀雄氏が、将来の国の姿を念頭に置きつつ考察した。超高齢化社会となった日本で広がる「終末格差」、年金制度が抱える問題などを、経済的な視点から論じる。

要約

団塊ジュニア世代が直面する老後問題

 かつての日本では、終末の迎え方について、大きな個人差はなかった。理由の1つは、平均寿命が短かったことだ。

 ところが、この数十年の間に日本人の平均寿命が延びた。今では、高齢者の介護などが大きな問題となっている。介護施設に入るにも、満足のできる民間の施設に入るには大変な費用がかかる。その費用を払える人もいるが、払えない人も多い。

 こうして、終末に至るまでの状況が、人によって大きく異なるようになった。つまり、「終末格差」が広がったのだ ―― 。

団塊ジュニア世代による高齢化社会へ

 これまでの少子高齢化問題の中心は「団塊世代」(1947~49年に生まれた世代)だった。人口数が非常に多いこの世代が高齢化したことで、日本は世界でも稀に見る超高齢化社会になった。

 ところが、未来における高齢者問題は「団塊ジュニア世代」(1971~74年頃に生まれた世代)が中心になる。2024年では50~53歳程度になる。

 団塊ジュニア世代に関連する概念として「就職氷河期」(1993~2004年頃)がある。

 彼らが大学を卒業した時期は、就職氷河期と重なる。この間は有効求人倍率が1を下回っていたため、多くの人が正社員になる機会を逸した。

 この世代の人々には非正規雇用が多いので、社会保障制度で守られていない場合が多い。また、非正規の場合は退職金も期待できない。だから、老後の生活資金を自分で蓄える必要がある。しかし、実際には、所得水準が低かったので資産も蓄積していない人が多い。

賃金低下とリストラに喘ぐ50代社員

 こうしたこと自体は、今に始まったことではない。1970年代にも同様の傾向が見られた。「日本の賃金体系は年功序列的」と言われるが、ピークは意外に早い年齢で生じる形になっていたのだ。

 ただし、2000年代以降に重要な変化があった。その1つは、賃金が伸び悩み、50歳代においてそれが顕著に見られるようになったことだ。50歳代中頃の賃金のピーク値が、絶対的にも、また若年層との比較でも低下しているのである。

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