2025年5月号掲載
誤解を招いたとしたら申し訳ない 政治の言葉/言葉の政治
- 著者
- 出版社
- 発行日2025年2月12日
- 定価2,420円
- ページ数337ページ
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著者紹介
概要
政治の世界に、無責任な発言は付き物だ。「そんなつもりはなかった」「誤解を招いたとしたら申し訳ない」…。政治家の発するこうした“言い訳”は、どこに問題があるのか? 気鋭の言語哲学者が、実際に世間を騒がせた様々な発言を題材に解説する。言葉と、それに伴う責任のあり方について考える上で、示唆に富む1冊である。
要約
「そんなつもりはなかった」
言質を取られる、というのは、政治家が最も嫌うことの1つだ。政治家は時に巧みに、時に白々しく、発言に伴う責任を逃れようと試みる。
責任逃れの「そんなつもりはなかった」
例えば、「そんなつもりはなかった」。
責任ある立場の人が自身の発言の問題点を指摘され、こう言い訳するのを私たちは度々耳にする。
2022年6月、神道政治連盟国会議員懇談会での講演資料に、次のような内容が記載されていた。
「性的少数者のライフスタイルが正当化されるべきでないのは、家庭と社会を崩壊させる社会問題だから」
性的少数者のライフスタイル(講演の内容を踏まえれば、ここには同性愛そのものが含まれる)を否定することは今の日本社会において差別だ。
このことが報道されると、その差別的な内容に対し、多くの批判・抗議がなされた。それを受け、神道政治連盟の担当者は次のようにコメントした。
「(講演者は)…『私には差別の意図はございません』とハッキリおっしゃっています」
そんな言い訳は通用しない、と言わざるを得ないのではないだろうか。
その一方で、こうした言い訳が通用すると思わせてしまう何かが、その言い訳にはある。その「何か」の1つが、「本当のことは本人にしかわからない」論法というものだ。
「本当のことは本人にしかわからない」論法
「本当のことは本人にしかわからない」論法とは、次のような論法だ。