2001年4月号掲載
だれが「本」を殺すのか
著者紹介
概要
毎日180点もの新刊が並ぶのに、本が売れない。魅力ある書店はなくなり、読みたい本ほど手に入らない。そして相次ぐ出版社の倒産と書店の閉店――。こうした、「本」を取り巻く危機的状況を描いた、ノンフィクション作家・佐野眞一氏の渾身のルポルタージュ。書店、流通、版元、編集者等々への幅広い取材を基に、本をめぐる世界の危機が浮き彫りにされる。
要約
かつてない出版不況の到来
本は、著者 → 出版社(版元)→ 取次(卸問屋)→ 書店という流れを経て、読者のもとへ届く。この流れを、業界では「新刊委託」と呼ぶ。書店が本を買い取るのではなく、「委託」の形で書店に並べるからである。従って、売れない本や、売れないと判断された本は、版元に「返品」される。
この出版業界が、かつてない不況に陥っている。
2000年の取次ルートを経由した書籍・雑誌の推定販売額は2兆3900億円で、前年実績を3%弱下回り、4年連続のマイナス成長となった。このうち書籍の売上は対前年比2.7%減と、同じく4年連続の前年割れとなっている。
出版不況の現実は、書籍の返品率にも如実に表れている。2000年の返品率は39.5%。同年の書籍の推定発行部数は13億2000万冊なので、5億2140万冊もの膨大な返品が発生したことになる。
こうした現実を背景に、老舗を含む出版社の経営破綻が続いている。
そして、書店もまた苦しんでいる。現在、全国に2万1000店あまりの書店があるが、零細書店を中心に年間1000店を超える勢いで廃業に追い込まれているのである。
なぜ出版不況は起こったか?
この出版不況は、「新刊バブル」と「出店バブル」が同時に発生したことが主な原因である。
1960年、新刊書籍の年間発行点数は1万1000点あまりだった。それが2000年には、6万7000点にも達し、1日当たりにして約180点も刊行されるようになった。これが「新刊バブル」である。
一方、全国の書店の売場面積は、76年当時は約27万坪だった。それが96年には約124万坪と、4.6倍にも膨れ上がっている。
こうした適正な市場規模を超えた新刊ラッシュと“オーバーストア状況”が、本の需給関係に決定的なアンバランスをもたらしたのである。