2002年5月号掲載
成果主義は怖くない 「仕事人生」を幸せにするキャリア創造
著者紹介
概要
成果主義――。日本企業において急速に拡大しているこの人事制度は、ビジネスパーソンにとっていいことなのか、悪いことなのか。本書では、キャリア開発の第一人者が、成果主義にまつわる様々な誤解や問題点を取り上げ、成果主義の本質を浮き彫りにする。併せて、成果主義に振り回されずに、幸せなキャリアを構築していくための考え方を提示する。
要約
今なぜ成果主義が必要なのか?
日本では今、「成果主義」の人事制度を導入する動きが急速に広がっている。そうした改革を考えていない企業を探す方が難しいほどだ。
では、なぜ今、成果主義が必要なのか?
その最大の理由は、急速に拡大する「知識産業」において、日本のホワイトカラーの生産性が欧米に比べて明らかに低い水準にあることだ。
知識産業では「人間の知恵」こそが付加価値を生み出し、強い競争力となる。ところが日本企業はこれまで、経営幹部など一握りのリーダーだけが知恵を使い、それ以外の大多数は汗を流すことで利益を生み出す仕組みを取ってきた。
今、日本企業に求められているのは、「より多くの人の知恵が利益をもたらすビジネスモデルへの転換」にほかならない。
つまり、第一線で顧客と接する多くの人が知恵を出して、顧客に付加価値をもたらす。それが企業に利益をもたらすという仕組みだ。
こうした知識産業の時代に必要なのは、命令に従って動くのではなく、自分で創造的に仕事を汲み上げていく人材だ。では、社員を創造的な思考やリスクを取る行動に駆り立てるものは何か?
それは「自分のやりたいことをやる」ということだ。自分で考え、生み出したやりたいことへの強い思い入れこそが、高い成果を引き出すのだ。
つまり、自分でやりたいことを考え、責任を持ってなし遂げることを前提とした成果主義 ―― 社員が自らの考えで行動して顧客に対して価値を生み出し、それが成果として評価される ―― こそが本当の意味で求められているのである。
成果主義にまつわる誤解
ところが、成果主義については様々な誤解が広がっている。