2002年5月号掲載
なぜ国家は衰亡するのか
- 著者
- 出版社
- 発行日1998年11月4日
- 定価723円
- ページ数237ページ
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著者紹介
概要
大英帝国、ローマ、そして日本 ―― 歴史上、外敵の侵入で滅んだ国はない。衰退はその国の「内なる原因」によってもたらされる。そう主張する著者が、歴史の教訓から「文明衰退の理」を導き出す。そしてそれをもとに、バブル崩壊以降、衰退の兆候を見せている日本の再生の可能性について、考察する。そのカギは日本的価値観にある。
要約
衰退する現代日本
出口の見えない不況、進まない各種改革、危機に際し場当たり的な対応しかできない政府、相次ぐ企業の不祥事…。今日本は、誰の目にも「衰退」の兆しを露わにしているように見える。
だが衰退は、何も異常なことではない。ある文明や国家が発展し成熟した後、やがて衰退するというのは、歴史に共通するリズムである。
従って大切なのは、必ずやって来る衰退を真っ直ぐに見つめることであり、それにどう対処するかということである。
日本の衰退のパターンを見ると、明治に入ってからの60~70年の発展と衰弱、そして戦後日本の発展と衰弱のパターンには、パラレルな関係がある。そして、この2つのプロセスにおいて重要な位置を占めるのが、明治38年(1905)に終わった日露戦争と、昭和48年(1973)に日本を襲ったオイル・ショックと70年代後半のその克服である。
この2つは近代日本の成功の「2つの頂点」をなすとともに、その後の経緯、すなわち「過剰」への転落(冒険的な大陸進出と、バブル経済への堕落)においても相似性がある。
ビジョンの喪失と古いパラダイムへの固執
日本は明治維新以来、右肩上がりの成長を続け、第1次世界大戦の間はかつてない好景気、すなわちバブルに酔いしれた。
だが、戦争終結によりバブルは崩壊、関東大震災の発生が追い打ちをかける中、日露戦争から20数年後の昭和2年(1927)には「金融恐慌」を迎え、その成長は終わりを告げる。
しかし実は、日本の将来が不明瞭になったのは、日露戦争に勝利したその時だった、と言える。
日露戦争に勝ったことは、日本のみならず、アジア諸民族にとっても極めて大きな事件であった。この時こそ、日本は大きな歴史的視野を持って日本の将来を展望しなければならなかった。
しかし“世界の1等国”になったという達成感は、すぐに目的の喪失感に変わり、次に何をすべきなのか、今後どのような日本を築くべきかという「ビジョンを欠く」結果となってしまった。
そして政府の主流は、西洋列強がたどった道を後追いすればいい、という考えに傾く。