2002年10月号掲載
ポケット版 小さなスーパーの世界一のサービス お客の声を聞くしくみ
Original Title :Crowning the Customer
著者紹介
概要
本書は、アイルランドのスーパーマーケットの社長が社員向けに書いたマニュアルを書籍化したもので、米国やヨーロッパ各国でも出版された。なぜ一企業の社内マニュアルがそれほどの注目を集めるのか。それは同社が「真の顧客志向」を実現しているからだ。その核心は、お客様に戻ってきてもらうことを最大の任務と考える「ブーメランの法則」にある。
要約
「ブーメランの法則」
私にとって顧客志向の企業とは、お客様にもっと奉仕したいという願望に基づいて、全ての意思決定をする企業のことである。
私はその考えに基づき、1960年にスーパーマーケットを始めた。ただ、これを単に理論として信じていたら、顧客志向にはならなかっただろう。10代で初めて経験した商売の実体験で確信を得たからこそ、顧客志向になったのである。
その体験とは、小売業とは縁のない旅行業だった。私の父はレッド・アイランドというホリデーキャンプを経営していた。私は学校が休みの時は、そこで、あらゆる仕事をして働いた。
レッド・アイランドでは、利用者は到着時に旅費、食費、宿泊費、娯楽費など、必要な費用全てを含んだ料金を支払う。追加料金は一切不要なため、お客はホテルにチェックインすれば、後はお金に煩わされることはない。この固定料金制度は、利用者には魅力的だった。
ところが経営面で見ると、宿泊客は到着した時点で全ての費用を支払っているため、彼らにどれほどサービスをしても、利益は増えない。
にもかかわらず、従業員は宿泊客に最高の休日を過ごしてもらうための努力を重ねた。なぜか?
それは、宿泊客に戻ってきてほしいからである。「次の年もまた来たいと思ってもらう」 ―― 全てはこの目的のためになされたのである。
そしてその成果は、リピート客の予約数に表れた。多くの宿泊客が、チェックアウトする時に、翌年の滞在分の頭金を支払ったのである。日々お客に対して努力してきたことは、翌年の滞在分の前金という形で返ってきたのだ。
この体験から、「お客様に戻ってきてもらうことに集中することがビジネスの王道」だということを、ビジネスの常識として受け止めた。
お客様に戻ってきてもらうことを最大の任務と考えよう ―― お客が帰ってくることから名付けられた「ブーメランの法則」は、こうして生まれたのである。