2004年12月号掲載
カラ売りの美学 堕ちる企業を見破るプロの投資術
Original Title :The Art of Short Selling
著者紹介
概要
本書は、株式投資の一種「カラ売り」のテクニックを、事例を交えて詳細に解説したもの。その本質は、「ダメになる企業の見分け方」のテクニックといえる。「全ては公開情報の中にある」と著者が断言するように、誰もが入手できる公開情報や市場の現場を見る目などを養えば、これからダメになっていく会社かどうかが、判断できるのだ。
要約
堕ちる企業を狙う「カラ売り投資家」
高値をつけた企業の株が暴落する時でも、ウォール街にはしっかりと利益を得ている投資家がいる。「堕ちていく企業」から利を得る、「カラ売り投資家」だ。
彼らは、普通の投資家と同じように株を安く買い、高く売る。だが、売り買いの順序は、普通の株の売買とは逆になる。まず株を高く売ってから、暴落したところで安く買うのである。
電気製品の小売業者クレイジー・エディの株価が高騰していた頃、カラ売り投資家はこの企業を徹底的に調べていた。どうやら在庫は販売を超える勢いで増えている。経営陣は私腹を肥やすのに忙しく、株主利益など眼中にないようだ…。
そこでカラ売り投資家は、ウォール街の熱狂をよそに、同社の株を40ドルの高値で売った。やがて株は暴落。カラ売り投資家はその株を2ドルで買い戻して手仕舞いとした。こうしてわずか1年足らずの間に、1株当たり38ドル儲けたのだ。
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「カラ売り(selling short)」とは、自分が持っていない株を他者から借りて売り、その後買い戻して返すという投資手法である。これは、株を売った後に株価が下落することを見越した上での戦術であり、予想通りに株価が下がれば利益になる。
カラ売りのターゲットになる企業を大きく分類すると、次の3通りになる。
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- ①経営者が投資家に嘘をついたり、不透明な事業による売上や利益が大きい企業
- ②企業価値と照らし合わせて投機的なバブルがうかがえるほど、株価が膨れ上がった企業
- ③外部環境に大きく左右されそうな企業
つまりカラ売り投資家は、企業がこうした状況に堕ちてくるのを虎視眈々と狙っているのだ。
彼らは、目当ての銘柄を見つけるために、膨大な量の財務諸表を読み漁る。また、相手を選ばず、あらゆる話題について話をする。テニスシューズの流行をベビーシッターに尋ね、子供におもちゃの評価を聞き、新しい薬について医師と話す。一般新聞はもちろん、業界紙にも目を通す。流行の商品があれば漏らさずチェックする。
そして、ある業界の相場に割高感が出てきたら、その業界の企業を具体的に研究して証拠を追い求める。ある企業の中で何かがうまくいっていない気配がする時、そこから探りが始まる。
その気配、兆候とは、次のようなものだ。