2005年5月号掲載
強者のしくみ 論理的思考と全体最適を徹底する会社
著者紹介
概要
業界でトップシェアを取り、なおかつ成長を続け、利益も上げ続ける。そんな「強者」ともいえる企業は、「強者のしくみ」を持っている ―― 。このように指摘する著者が、強者の例としてセブン‐イレブンとしまむらを取り上げ、両社を強者たらしめる経営のしくみを解説する。今の多くの日本企業に欠けている、論理的思考や全体最適を徹底する必要性を説く。
要約
強者のしくみとは何か?
“強者のしくみ”というものがあるなら、“弱者のしくみ”もあるのだろうか? 答えはノーだ。弱者には、しくみというものがない。しくみがないから、弱者にとどまっているともいえる。
弱者はしくみではなく、コロコロ変わる上司の恣意や、問題が起こるたびに開かれる会議によって動いている。
これに対して、強者はしくみで動く。そうした強者の好例が、セブン-イレブンとしまむらである。
両社と他の日本企業の経営はあらゆる点で異なるが、特に、両社にあって他の日本企業にないものが3つある。それは、「しくみ」「成功方程式」「コントロール」だ。
この3つによる経営が、日本の企業に決定的に欠けているものであり、かつ両社に継続的な高業績をもたらしているものである。
① しくみ
社員を会社の目標に向かわせるのに、「放っておいても社員が自らの意志で利益を最重要テーマにして動くようになる」のが、しくみである。
しくみの何たるかを知るには、しまむらを見るとわかりやすい。同社の業務は全て、コンピュータを中心にして互いに連鎖して回っている。
例えば、新規商品を発注する場合、まず商品マスターに商品登録を行う必要がある。
この作業が、どの企業でも大きな負担となっている。商品名や商品コード、原価、売価、取引先名等を、いちいち入力しなければならないからだ。
ところがしまむらでは、この新規商品のマスター登録作業が驚くほど簡単である。
バイヤーがパソコンで新規商品の発注を行うと、自動的に番号が割り当てられて商品登録が行われるしくみになっている。つまり“商品マスターへの初期登録”という作業自体がないのである。