2020年9月号掲載
ワークマンは商品を変えずに売り方を変えただけでなぜ2倍売れたのか
著者紹介
概要
作業服専門店「ワークマン」。2019年の消費増税後も、新型コロナ禍の中にあっても右肩上がりに成長し、国内の店舗数はユニクロを超えた。その強さを支えるビジネスモデルに迫った書だ。在庫リスクを恐れず新商品を生み出す、データを見ながら何でも変える…。同社の改革の数々、それは激動の時代を生き抜くヒントでもある。
要約
ワークマンを変えた男
作業服専門店として知られる「ワークマン」。
国内の店舗数は、2020年5月末で869店舗。あのユニクロを抜き去り、1000店舗体制も視野に入った。既存店売上高は20年3月まで17カ月連続で前年比2桁成長を継続。フランチャイズシステムをとる同社の20年3月期のチェーン全店売上高は1220億円と、創業以来、初めて1000億円の大台に乗った。
新型コロナウイルスが列島を直撃し、アパレル企業が総崩れとなる中、同社だけは順調に収益を積み上げている。なぜ、ワークマンは強いのか?
「ユニクロ、ニトリを目指せ」
2012年、同社の土屋嘉雄会長(当時)は、三井物産を定年退職した甥の土屋哲雄(現ワークマン専務)を常勤顧問として招き入れた。この人物が、同社を成長企業へと変貌させた。
ワークマンに来た土屋氏は、そのやり方に感心した。「すべてをマニュアル化して、誰でも運営できるシステムが確立されていた。だから誰にでも引き継げるし、あまり頑張らなくても成果を出せる」と、氏は言う。
ワークマンだけではない。スーパーマーケットの「ベイシア」、ホームセンターの「カインズ」を含め、嘉雄氏が一代で築いたベイシアグループは効率経営を貫き、順調に業績を伸ばしてきた。
運営力を伸ばし、店を標準化する、マニュアル化する、余計なことはしない。商社マンとして数々の企業を見てきた土屋氏がうなるほど、超効率経営を実践していたのだ。
しかし、同時にこのままでいいのかと感じた。「オペレーションが強くても、仕入れ品を安く売るだけでは、ブランド力はつかない。やはり製品までやらないと駄目なんじゃないか」。頭に浮かんだのはユニクロやニトリ。PB(プライベートブランド)を自社で開発するSPA(製造小売り)にならないと、これ以上成長できない。そう思った。
そして開けた「パンドラの箱」
ハードルになったのは、在庫に対する考え方だ。同社は効率経営を重視していたため、在庫を持つことをタブー視していた。よって、PBはやらなかった。作業服は在庫になることが多いからだ。
土屋氏は、このタブーを破ることにした。手始めに作業服のデザインをスタイリッシュにし、上下合わせて破格の3000円で50万着製造した。在庫を持つという「パンドラの箱」を開けたのだ。すると、予想以上に売れた。
「ちゃんと販促をやれば、絶対に売れる」