2005年6月号掲載
ダイレクト・モデル経営
著者紹介
概要
19歳で大学を中退したマイケル・デルが、1984年に創業したデルコンピュータ。創業20年目となる2004年度の売上は492億ドル(約5兆4000億円)。今や世界第1位のパソコンメーカーとなった。それを可能にしたのが、「ダイレクト・モデル」戦略だ。本書は、その「デル・ビジネス」について、同社の日本法人で会長を務めた著者が語ったものである。
要約
ダイレクト・モデルとは何か?
今や世界第1位のコンピュータメーカーとなったデルは、現在、世界170以上の地域で5万5000人の社員を擁し、収益力、資産効率の高い企業として高い評価を受けている。
デルの目標・理念は、顧客にベストな経験、最高の満足を味わってもらうことだ。それを実現するために、デルは3つの戦略を持っている。
1つは、ダイレクト・モデルというビジネスモデル。2つめは、インターネットを有効に使う戦略。3つめは、総花的ではなく、一点集中事業や製品分野で焦点を絞り、特化していくというものだ。
ダイレクト・モデルの基本は、デルと顧客を直結することにある。直接販売と同時に、ハードもソフトも顧客の要望に合った仕様で、受注生産するカストマイゼーションが核となっている。
そして、このモデルには、次の3つの優位性がある。
- ①顧客とダイレクトにつながることにより、顧客が何を求めているか、その嗜好がどう変化しつつあるかなど、顧客情報を直接得られる。
- ②受注生産にはムダがない。在庫を持たない効率的な運営が可能になる。
- ③部品の技術開発・製造を提携企業に任せることによって、それぞれの強い部門を統合できる。
デルは創業以来、こうしたビジネスモデルを実践し、さらにより高い効率性を求めて1995年にインターネットを採用した。
インターネットには、対顧客、対パートナー企業、社内活用の3つの活用法がある。対顧客、対パートナー企業においては、効率化、スピード化、コストダウンが図られ、社内活用においては事務処理が軽減され、コストダウンにつながる。
では、デルのダイレクト・モデルとは、具体的にどのようなものなのか?
デル式「勝利の方程式」
デルの利益内容を他社と比較すると、経費が格段に違うことがわかる。デルの場合、在庫管理費などを含む一般販売管理費は10%以下である。
また、他社のように、在庫処分などの特別損失を計上することもない。不良在庫がないからだ。
デルの収益構造は、ダイレクト・モデルにより成り立っている。デルはその勝利の方程式を背景に、価格競争という土俵に他社を引き込み、新製品の価格をできるだけ早く下げて勝負をする。