2024年10月号掲載

進撃のドンキ 知られざる巨大企業の深淵なる経営

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著者紹介

概要

売上高2兆円超、34期連続で増収増益。今や日本の小売りグループで売上高4位となった「ドン・キホーテ」。この快進撃を可能にしたものとは? 変幻自在の店づくり、現場への徹底した権限委譲、仕事を「労働」(ワーク)ではなく「競争」(ゲーム)にするなど、業界の常識を打ち破った“異端企業”ならではの経営戦略に迫る。

要約

変幻自在の店づくり

 1989年、ディスカウント店「ドン・キホーテ」1号店が産声を上げた。以後、34期連続増収増益を達成。気づけば、国内小売りグループでセブン&アイ・ホールディングス、イオン、ファーストリテイリングに次ぐ売上高4位に浮上した。

 なぜ、ドンキはここまで急成長できたのか。

 それは、業界の常識とされた経営手法に背を向け、独自のビジネスモデルを確立したからである。

「主権在現」:現場に徹底して権限を委譲する

 日本の小売業界の多くは、米国生まれの「チェーンストア理論」を手本としてきた。本部が店を完全にコントロールすることで一定の品質を担保しながら、多店舗展開へとつなげていった。

 ドンキを創業した安田隆夫氏は、あえてこの理論を無視する道を選んだ。「いつ潰れるかわからない小さな会社で、彼らと同じ競技種目をやったら絶対勝てないという前提認識があった」からだ。

 キーワードは「主権在現」である。「主権在民」をもじって、現場に徹底して権限を委譲するドンキの鉄則を示す。どんな商品を仕入れ、いくらで売るのか。店のどこに並べて、どう売るのか。

 現場を信じてすべて任せてしまうからこそ、多店舗展開しながらも個性を持った店が出来上がる。

想定顧客に最も近い店員

 ドンキには「顧客親和性」という言葉がある。店づくりには想定顧客に最も近い店員が関わるべきという考え方だ。実際、10代~20代半ばのZ世代をターゲットにした「キラキラドンキ」の名古屋のスタッフは、平均年齢19歳である。

顧客生涯価値の向上を狙う「○○ドンキ」

 「キラキラドンキ」のほか、化粧品に特化した「コスメドンキ」、世界の激辛商品が集う「驚辛ドンキ」など、「○○ドンキ」が全国で続々と誕生している。ドンキは、特定のジャンルを切り出す一点突破型の店舗に商機を見いだしたのだ。

 ○○ドンキで狙うのは、顧客生涯価値(LTV=ライフタイムバリュー)の向上だ。LTVは、1人の顧客が生涯にわたって生み出す利益の合計額を指す。できるだけ若いうちに「ドンキは楽しい」というイメージを持ってもらえれば、その後の人生においてドンキを選ぶ優先順位は高まる。

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