2021年8月号掲載
小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」
Original Title :RESURRECTING RETAIL:The Future of Business in a Post-Pandemic World
- 著者
- 出版社
- 発行日2021年6月14日
- 定価2,420円
- ページ数400ページ
※『TOPPOINT』にお申し込みいただき「月刊誌会員」にご登録いただくと、ご利用いただけます。
※最新号以前に掲載の要約をご覧いただくには、別途「月刊誌プラス会員」のお申し込みが必要です。
著者紹介
概要
新型コロナ禍で、小売業界は激変しつつある。アマゾンなどの巨大企業がより強大化する一方、大量の小売店が苦境に陥っている。生き残るには、ビジネスの見直し、差別化が欠かせない。そのヒントとなる、10種類のリテールタイプを提示する。加えて、自社のポジションを強化する際の指針となる4つの領域も示す。
要約
食物連鎖の頂点に立つ怪物たち
小売業者にとって、新型コロナウイルス感染症は、隕石の衝突のようなものだった。100年に一度あるかないかの出来事だ。その結果、小売業界に生息していた多くの種が絶滅し、残った種による死に物狂いの適応行動が始まる。
この混沌とした状況から、新しい捕食者が誕生する。自然界でこうした種は、食物連鎖の頂点に立つ捕食者(頂点捕食者)だ。小売りの世界では、アマゾン、アリババ、京東商城(JDドットコム)、ウォルマートである。
この4社を合わせると、年間売上高は約1兆ドルに達する。この頂点捕食者たる怪物企業は、パンデミックでさらに大きく、強くなっていく。
コロナ禍すら成長の追い風にする怪物企業
実際、アマゾンの売上は2020年第1四半期に、750億ドル増となった。アリババの売上は2020年第2四半期に34%増となった。
ウォルマートも、2020年第1四半期には、オンライン事業の売上が前年同期比74%増という驚異的な数字を叩き出した。パンデミックの全期間を通じて、ウォルマートが「生活維持に必要不可欠」の小売業者に指定されてからは、実店舗の売上も、2020年第1四半期は10%成長となった。
5年前まで苦境に立たされていたウォルマートが、驚異的な進化の新たな段階に突入したのだ。
新しいデジタルフロンティアのリーダー
だが、進化は諸刃の剣だ。食物連鎖の頂点に立つ怪物ブランドにも、やがてはそのイノベーションや成長がかすんでしまうような強敵が現れる。
意外かもしれないが、アマゾンはパンデミック中にEC(電子商取引)市場でシェアを落とした。それは、他の業者もオンラインに参戦し始めたからだ。業界全体としてオンライン販売にテコ入れし、アマゾンとの差を縮めているのだ。
実は、アマゾンやアリババが手がけているECの手法は、25年も前から世の中にあるものだ。
スタートアップのオブセスの創業者ネハ・シンは、「アマゾンのインターフェイスは、そもそも書籍販売のために25年前に開発したもので、今日では他のECサイトも揃って似たようなインターフェイスになっています」と指摘する。
シンは、ブランド各社を顧客に、ユーザーにブランドの世界観にどっぷりと浸かってもらえる魅力的なショッピング体験づくりに取り組んでいる。