2005年6月号掲載
プロダクトストラテジー 最強最速の製品戦略
Original Title :Product Strategy for High-Technology Companies, 2nd edition
著者紹介
概要
インテル、マイクロソフト、アップル、デルなど、世界の主要なハイテク企業が、どのような「プロダクトストラテジー(製品戦略)」をもとに勝ち残ってきたのかを詳述する。紹介されているのはハイテク企業の事例だが、その戦略プロセスは業種を問わず参考になる。差別化戦略からマーケティングに至るまで、製品戦略に関する総合的な教科書。
要約
「コア戦略ビジョン」から始まる
「これからどこに進みたいのか」というビジョンを持たない企業は、どんな「製品戦略(プロダクトストラテジー)」を立てたところで、思わぬ方向に進みかねない。
製品戦略には、その骨格となる「コア戦略ビジョン」が必要だ。それは目標や達成方法、成功要因を示し、企業を進むべき方向に導いてくれる。
製品戦略を成功に導くコア戦略ビジョンには、いくつかの特徴がある。
まず、優れたコア戦略ビジョンほど、焦点が絞られており、明確である。加えて、完璧なビジョンは、次の3つの問いに答えることができる。
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- ① 達成すべき目標は何か?
- ② どうすればそれを達成できるのか?
- ③ なぜそれが成功するのか?
例えば、1976年にスティーブ・ジョブズらによって創立されたアップルコンピュータ。同社のビジョンは、使いやすさを追求した、「娯楽のため」のコンピュータを作り出すことであった。
これは、非常に優れたビジョンである。当時、パソコンのアプリケーションを正しく動かすのは容易ではなかった。アップルはこれらの問題を解決することに開発を集中させ、業界をリードした。
ところが83年、ジョブズの後任としてCEOになったジョン・スカリーは、同社のコア戦略ビジョンに注意を払わなかった。その代わり、彼がペプシ時代から熟知していた広告宣伝によってブランドを作り上げることに焦点を当てた。
その結果、市場シェアは20%から8%に落ち、以後も、売上の下落は止まらなかった。
後知恵だが、次のようなビジョンが描かれていれば、同社の凋落はなかっただろう。
—— アップルは、様々な面で使いやすさを追求し、コンピュータ技術をより一般大衆に広げることを約束する。そして、マッキントッシュOSを、多くのソフトが利用できるインテルベースのコンピュータでも使えるように再設計する。
もし、このようなシナリオが現実のものとなれば、アップルはウィンドウズと競合する強力なOSを開発していただろう。その実現の可能性はあった。同社は、それを成し遂げるための市場ポジションや技術を持っていたからだ。ただ、そうしようと思わなかっただけである。