2005年6月号掲載
ナノテク革命を勝ち抜く! ビジネスマンのためのナノテク入門
著者紹介
概要
あらゆる業界での技術を刷新する可能性を持った「ナノテクノロジー」の革命が、今、始まろうとしている。それは技術者ばかりか、ビジネスマンなどにとっても避けて通れないものだ。つまり、ナノテクは技術論だけでなく、今後はビジネスのテーマとなる。本書では、ナノテクビジネスに成功するにはどうすべきか、その基本的な“知識と心得”を説く。
要約
ナノテク革命がビジネスを変える
ナノテクとは、「あらゆるものを構成する最小の単位である原子・分子を積み上げて、新たな製品を作り上げる」技術と表現できる。
「ナノ」とは、10億分の1(10-9)を表す単位の接頭語のこと。従って、1ナノメートルとは10億分の1メートルである。これは、遺伝子の情報を司るDNA(デオキシリボ核酸)の大きさでもある。
では、この非常に小さいナノレベルの世界において、どんなことが起きるのか?
ごくありふれた素材が突如、特異な機能を持つのである。例えば、東レが2002年に発表した「ナノファイバー」。その組成はごく普通のナイロンだが、直径数十ナノメートルの極細繊維にしたところ、綿繊維と同じレベルの吸水性が出てきた。
あるいは、カーボンナノチューブ。金網のように並んだ炭素原子の膜を丸め、中を空洞にした筒形のこの物質は、炭素で作られている点では鉛筆の芯と同じだ。だが、その強度は鉄の20倍もある。
人体も自動車の材料も、世の中に存在するあらゆる物質は、わずか100種類ほどの元素で構成されている。それが、ナノレベルの世界においては、原子の組み合わせ方やつながり方で、全く新しい“機能”を持った物質ができ上がる。
ナノテクの大きな特徴は、分野横断型の技術であることだ。材料、バイオテクノロジー、エレクトロニクス、エネルギー・環境の各分野を変革する基幹技術として分野を超えて関わり合っている。つまり、あらゆる業界に影響を与えるのだ。
これらの成長産業分野では、参加企業間で熾烈な競争が展開されている。ナノテクを駆使することで、各分野において、革新的な製品やデバイスが出現するかもしれない。
例えば、黒いダイヤともいわれるフラーレン。炭素でできたこの物質は、化学的、熱的にも安定で壊れにくい性質があり、太陽電池、分子コンピュータ、がん治療薬など、各分野で革新的製品開発につながるものとして期待されている。
こうした新たな技術が開発実用化されることにより、我々の生活においても「1週間分のハイビジョン画像を1枚のディスクに保存する」「がんになりそうな細胞を健康診断で事前に発見する」などの成果が期待されている。
ナノテクの今後の市場規模について、経団連では、2010年に27兆円になると予測している。とりわけIT・エレクトロニクス関連、プロセス・マテリアルなどの分野の伸びが大きく、2010年には両分野合計で約23兆円になると見られている。