2020年12月号掲載
Learned from Life History 38億年の生命史に学ぶ生存戦略
著者紹介
概要
今日、我々が目にする生き物は、38億年の進化の歴史を勝ち抜いた勝者だ。すべて、自分がナンバー1になれる場所を見つけ、生き残ってきた。その生存戦略は、ビジネス戦略に通じるものがある。周りにライバルがいない時は陣地を広げ、現れれば陣地を強化する雑草の戦略をはじめ、“予測不能な時代”の今、学ぶべきことは多い。
要約
生き残るための戦略
我々の目の前にいる植物や生き物たちは、すべて38億年の進化の歴史の中で勝ち抜いてきた勝者である。この進化の歴史の中で、生き物たちは生き抜くための「戦略」を発達させてきた ―― 。
ナンバー1しか生き残れない
「ナンバー1しか生き残れない」
これが、自然界に存在する唯一の真実である。この真実を示したのが、「ガウゼの実験」だ。
旧ソ連の生態学者ガウゼは、ゾウリムシとヒメゾウリムシを1つの水槽で飼った。すると、ゾウリムシは数が減り始め、ついには全滅した。
水槽という限られた空間の中では、2種類のゾウリムシは、生き残りをかけて激しく競い合う。そして、戦いに敗れた者は滅んでしまうのである。
2種類のゾウリムシの「共存」
実は、ガウゼの実験には続きがある。
今度は、ゾウリムシとミドリゾウリムシの2種類で同じ実験を行った。すると、2種類のゾウリムシは、どちらも滅ぶことなく共存したのである。
なぜか? ゾウリムシは水槽の上の方にいて、浮いている大腸菌をエサにしている。一方、ミドリゾウリムシは水槽の底の方にいて、酵母菌をエサにしている。つまり前者は水槽の上でナンバー1、後者は水槽の底でナンバー1だったのである。
すべての生き物がナンバー1である
すなわち、自然界に生きているすべての生き物は、どこかでナンバー1である。そして、そのナンバー1になれる場所は、それぞれの生き物だけのオンリー1なのである。
このナンバー1になれるオンリー1の場所を、生物学では「ニッチ」と呼ぶ。ビジネスの世界でいうニッチは、もともとは生物学で使われていた言葉がマーケティング用語として広まったものだ。
1つのニッチには1つの生物種しか棲めない。そして、生物たちはニッチを巡って激しく争い合うのである。