2005年12月号掲載
見える化 強い企業をつくる「見える」仕組み
著者紹介
概要
“読者が選ぶ2004年ベストブック”第1位に輝いた『現場力を鍛える』(東洋経済新報社)。同書で強い現場をつくるためのノウハウを披露した著者が、今度は、現場力を鍛える上で核となる「見える化」の概念を体系化した。顧客、市場、経営…。様々な競争力の源泉を「見えるようにする」仕組みを、豊富な事例とともに解説する。あなたは、見えていますか!?
要約
「見える化」とは何か?
企業活動の様々な側面で、異常や問題は日常的に発生している。重要なのは、そうした異常や問題が隠されたりせずに、「見える」ようになっているかどうかである。
見えてさえいれば手の打ちようはある。しかし、それが見えていない、あるいは隠蔽されている企業は間違いなく崩壊する。
強い企業は、戦略を実行する際に生じる様々な問題や障害を、現場が当事者として解決し、成果を生みだせる。
それに対し、弱い企業は「現場力」が劣化し、問題の解決が遅れたり、ひどい場合には問題が隠されたりする。
現場力とは、いわば企業の現場における「自律的問題解決能力」である。
強い現場力を持つ企業は、標準をクリアーした上で、さらにレベルの高い理想像を自ら設定する。
例えば、標準コストが80円で設定されていて、現状80円で製造していれば、問題はないように思える。だが、本当の現場力を持つ企業はそれで満足しない。競争に打ち勝つための「あるべき理想像」を設定し(例えば70円と設定)、その理想像と現状の乖離を問題だと自ら設定する。
このように、真の「問題解決型企業」になるには、問題設定能力を磨くことが必要なのである。
そのための第一歩は、問題を発見する、もしくは問題を設定することで、そこで生まれてきたのが、「見える化」というコンセプトである。
見える化とは、まさに「問題を『見える』ようにする」ことである。例えば、トヨタの「アンドン」には、その本質が凝縮されている。
アンドンとは、トヨタの各工場の製造ラインに吊り下げられている掲示板のことで、各工程や機械の稼働状況をランプで表示するものである。現場の管理者や監督者は工場のどこにいても、これを見れば現場の状況がわかるようになっている。