2006年2月号掲載
使える 弁証法 ヘーゲルが分かればIT社会の未来が見える
著者紹介
概要
世の中の変化の本質を鋭く洞察し、未来を予見した書を数多く世に送り出す田坂広志氏。そんな氏が、未来を予見する時に使うもの、それは驚くなかれ、「哲学的思索」だという。かつて、“複雑系の知”を見事なまでに平易に解説した氏が、今回は、ドイツの哲学者ヘーゲルの「弁証法」を紐解きながら、未来を読む、その技術を解き明かす。
要約
弁証法は、実生活の役に立つ!
物事の本質を洞察し、未来を予見するためには、何が必要なのか?
それには、膨大な情報や知識はいらない。必要なのは「哲学的思索」である。そして、それを行うのに役立つ方法が、ドイツ観念論の哲学者、ゲオルク・ヘーゲルの思想である「弁証法」だ。
弁証法において「最も役に立つ法則」
「ヘーゲルの弁証法」というと、多くの人は高尚な思想や哲学だろうと思い、日々の仕事や生活の役には立たないと思うだろう。
しかし、弁証法は極めて実践的な方法である。弁証法を使うのに、難解な思想を学ぶ必要はない。弁証法の中で語られるいくつもの法則のうち、「螺旋的発展」の法則を学ぶだけで十分である。
この法則は、「世の中の全ての物事の進歩や発展は、右肩上がりに一直線に進歩・発展していくのではない。あたかも螺旋階段を登るようにして進歩・発展していく」というものである。
螺旋階段を登っていく人を横から見ていると、より高い位置へと「進歩・発展」していくように見える。しかし、上から見ていると、この人は階段を登るに従い、柱の周りを回って元の場所に戻ってくるように見える。すなわち、昔の場所に「復活・復古」していくように見えるのだ。
「進歩・発展」と「復活・復古」が同時に起こる ―― これが螺旋的発展の法則である。
世の中の「螺旋的発展」を引き起こした革命
この螺旋的発展の姿は今、世の中のあらゆるところで見られる。その一例が「ネット革命」だ。
ネット革命は、インターネットを使って商品の売買をする「ネット・コマース」という新市場を生み出した。この市場から生まれた様々な先進的ビジネスモデルの中で、最も大きく成長したのが「オークション」と「逆オークション」である。
オークションとは、多くの買い手を集めて「競り」をし、値段を吊り上げながら売る方式である。 逆オークションとは「指値」のこと。買い手が希望する値段を示し、その値段で売ってくれる売り手が見つかったら商品を買う方式である。
今、このオークションのサービスを使って、不要品を売りに出す人や、逆オークションで航空券などを希望の値段で買う人が増えている。まさに先進的なビジネスモデルである。