2022年4月号掲載

ANTHRO VISION(アンソロ・ビジョン) 人類学的思考で視るビジネスと世界

Original Title :ANTHRO-VISION

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著者紹介

概要

人間の行動は、ビッグデータだけを見ていては理解できない。文化や背景を含めたより広い視野から見ることも必要だ。そのために身につけたいのが“人類学的視点”。好奇心を持ち、相手の身になって考える。こうして他者の視点から世界を捉え、自分自身をも客観視する。そんな物の見方を、米紙のトップジャーナリストが説く。

要約

アンソロ・ビジョンとは何か

 経済予測、選挙の世論調査、消費者調査…。近年、私たちが世界を理解するために使ってきたこうしたツールの多くは、うまく機能していない。予測が当たらないのだ。

 その理由は、ツールが役に立たないためではない。世界はごくわずかな変数で把握できるという前提に基づいて設計され、文化やコンテクスト(文脈、背景)に配慮せずに使われるからだ。

 世界を理解するために必要なのは広い視野であり、それは人類学が与えてくれるものだ。これを「アンソロ・ビジョン(人類学的視点)」と呼ぶ。

人類学のアプローチ

 人類学が私たちに与えてくれる教訓の1つは、「未知なるもの」を受け入れるのは自らのためになる、ということだ。そのために発展させてきたのが「参与観察(エスノグラフィー)」と呼ばれる方法論だ。

 人類学のアプローチは、子供のような好奇心をもって対象から学ぼうとする。そして目にしたことを体系化し、パターンを探そうともする。しかし出発点ではオープンマインドで、広い視野で世界を見ようとする。

 人類学で重要なのは、解釈とセンスメイキング(意味づけ)だ。たいていはミクロのレベルで観察し、そこから大きな結論を導き出そうとする。

好奇心を持ち、相手の身になって考える

 21世紀の社会では、大規模な統計データやビッグデータを使った分析を重視する風潮がある。このような高度な演算が重要な洞察をもたらすことも多いが、時には“鳥の目”ではなく“虫の目”で世界を見ることも必要だ。虫の目のアプローチからは、時として鳥の目やビッグデータでも拾えないような真実が明らかになる。

 エスノグラフィーの考え方を取り入れることは誰にでもできる。周囲に目を凝らし、耳を傾け、問いを投げかけ、好奇心を持ち「相手の身になって」考えるのだ。政治家、経営者などすべてのプロフェッショナルにとって実践する価値はある。

「未知なるもの」を身近なものへ

 人類学の知見はビジネスに役立つ。なぜか?

同じモノでも、文化によって意味は変わる

 それは、同じモノでも、異なる文化的コンテクストの下では異なる意味を持つことがあるからだ。コカ・コーラは身をもってそれを学んだ。

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