2006年5月号掲載
売られ続ける日本、買い漁るアメリカ 米国の対日改造プログラムと消える未来
著者紹介
概要
今の小泉改革は、金融、建築、保険、医療などの日本市場「完全開放」を求める米国の要望に沿ったもの ―― 。わが国の政策決定は、いつからこんな情けないことになったのか。著者は、その根源は1993年に設置された「日米包括協議」にあると指摘。日本の外交文書を解説しつつ、その実態を明らかにしていく。そこから見えるのは、“日本の幸福”ではない!
要約
米国が進める日本改造計画
日本から「公」の感覚が急速に消えつつある。私利私欲を満たすだけの行動が、社会の至る所で見られるようになった。
1998年、米国の圧力によって建築基準法が改定された。米国は、米国産木材の輸入増大と米材を使うツー・バイ・フォー工法の採用、さらに耐震性に問題のある木造3階建て住宅を、日本に認めさせた。こうして、日本の建築基準は甘いものとなった。
そして、建築に伴う各種検査の効率性や簡素化が米国から要請された。耐震偽装事件で問題となった、検査機関の民営化がそれだ。
米国からの圧力に押された政治家が、米国寄りの法律を作る。その過程で、権力の周囲にうごめく取り巻きが甘い蜜に群がり、蜜を既得権益へと変える。そして、市民が被害者となる —— 。
* * *
「米国外交問題評議会」という機関がある。ここは、様々なレポートを刊行しており、その中に、『新しい始まり…日米経済関係の再構築』という名のレポートがある。
2000年に発表されたこのレポートには、例えば、次のようなことが記されている。
- ・日本はさらに規制緩和を進め、競争を促すような法律を施行し、海外からの投資環境を整え、製品輸入を増加させる必要がある。
- ・通信、運輸、電気といった重要なセクターにおける規制緩和を行えば、日米経済関係の改善につながる。
- ・外部取締役の導入、世界標準的な会計基準の導入という企業統治の改善。株主資本収益率を重視するようになれば、外国人が日本企業を買収することが容易になる。
- ・外国資本による企業合併と企業買収を持続させるために、日本は規制緩和、経済再編を推し進める必要がある。
以上の改革を日本政府に実行させるために、米国は外圧の行使を躊躇すべきではない —— 。
実はここに、今日本で起きているほぼ全ての政治・経済現象の「発端」がある。
つまりこのレポートは、米大統領の意向を受けて、日本政府に向けて発せられたメッセージであり、以後、小泉政権のいわゆる構造改革が急展開した。小泉政権の構造改革とは、米国から要求された事項を、忠実になぞることだったのである。