2006年9月号掲載

組織行動の「まずい!!」学 どうして失敗が繰り返されるのか

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著者紹介

概要

組織の中で、人はなぜミスを犯すのか。なぜ大事故は続発するのか ── 。本書では、数々の事故や事件を詳細に分析し、そこからリスク管理の教訓を抽出した。些細な綻びをそのままにすることの怖さ。それを具体的に示す一方で、こうも言う。「問題点の本質を正確に把握できれば、その8割は解決したのも同然であり、取るべき方策は自ずと浮かび上がってくる」と。

要約

人はなぜ、ミスを犯すのか?

 人間とは、エラーを犯す生き物である。この“ヒューマン・エラー”に対し、昔は「間違いは誰にでもあるさ」と鷹揚に構えていればよかった。

 だが、今はそうはいかない。システムが巨大化・複雑化した結果、つまらないエラーが重大な事故につながるようになってしまったからだ。

エラーを誘発する職場環境

 日本では、組織や制度、職場の人間関係などのソフト面に起因するエラーが頻発している。

 その一例が、2005年4月に発生したJR西日本福知山線の脱線事故だ。この事故は、遅れを取り戻すために、T運転士が制限速度を超過して列車を運行させたことが脱線につながったものだ。

 もともとJR西日本は、赤字ローカル線を数多く抱えている上に、私鉄路線との競合が激しかった。その弱体な経営体質を改善するために取られた方策が、福知山線をはじめとする京阪神路線の高速化と運行本数の拡大だった。

 問題は、そのために運行スケジュールが極めて過密となってしまったことである。

 また、T運転士はわずか1年しか運転経験がなく、技量が不足していた点は否めない。

 実はJR西日本では、長年にわたるリストラと採用抑制の結果、職場の中核となるべき30代、40代の職員の比率が著しく低下していた。そのため、若手をどんどん運転士に登用するようになった。

熟練者の落とし穴

 近年、製造業の現場で大規模事故が頻発している。それも大抵の場合、現場に精通しているはずのベテランが事故の引き金を引いているのだ。

 その典型が、02年、三菱重工長崎造船所で発生した、建造中の大型客船の火災事故である。

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