2006年10月号掲載
石油最終争奪戦 世界を震撼させる「ピークオイル」の真実
著者紹介
概要
石油の供給量が減少に転じる日は、すぐそこまで迫っているのに、日本はこの現実を直視しようとしない ―― 。本書は、そんな現状に警鐘を鳴らすもの。石油の需給関係の現状を分析し、主要国による資源の争奪戦を解説するとともに、来るべき激動を新たなチャンスに変える道を説く。すなわち、脱浪費を旨に「自然と共存する国家」を築くための国家戦略を提示する。
要約
世界に取り残される日本
石油価格の高騰は一過性ではない。今、有限な石油が、その生産ピークを迎えつつあるからだ。
「石油ピーク」と呼ばれる、この問題の重大さに日本はいまだ気がつかないようである。しかし、地球は有限であり、限界は必ず来る —— 。
最後の石油争奪戦が始まった
多くの専門家は、2010年前に石油生産のピークは来ると考えている。ところが、日本はリスク管理のない国のようで、常に楽観論が幅を利かす。
その先端にいるのがエコノミストだ。彼らは、石油を単なる1つの商品としか捉えない。エネルギーが文明を左右するほどのことと思わないのである。そして技術者は、技術が進歩すれば大丈夫といって、思考停止する傾向がある。
一方、日本以外の大国は、相次いで国家エネルギー政策の再検討を打ち出している。
例えば米国は、国内エネルギー供給能力の拡大や、供給国との関係強化などを重視した「包括的エネルギー法案」を2005年に成立させた。
また、EU各国は、省エネによる需要抑制に優先度を置き、2020年までに20%削減の数値目標を設定し、取り組みを強化している。
歴史をたどると、古代から民族あるいは国家は資源をめぐって争ってきた。
イラクが国際的に揉めるのも、この国がサウジアラビアに次ぐ世界第2の石油埋蔵量を持つ国だからである。また、アフガニスタンや南シナ海は石油搬出ルートに当たる。
海底石油ガス田が期待される尖閣列島は、日中両国ともに領有権を主張している。これについても、もし石油・天然ガスの可能性がなかったら、揉めたりはしなかった。
海域の中間線の画定には、大陸棚がどこまでか、どこと繋がっているかという、海洋地質学的な判断が関係する。その調査は関係国が行うのだが、日本ではそれがスムーズに進まない。調査に必要な最先端の三次元地震探査船がないからだ。