2007年3月号掲載
ねばちっこい経営 粘り強い「人と組織」をつくる技術
著者紹介
概要
本書のタイトルである“ねばちっこい”とは、「粘り強い」という意味の茨城の方言である。この「粘り強さ」こそ、真の強い企業となるための決定的な要素であると、本書は事例を挙げて説く。奇抜なアイデアを出すことよりも、決めたことを愚直にコツコツやり抜く力を身に付ける、そんな一見、当たり前のことの難しさと重要性を、今、改めて見つめ直す。
要約
「粘り」という競争力
人間に「粘り強い人」と「飽きっぽい人」がいるように、企業にも「粘り強い企業」と「飽きっぽい企業」が存在する。
物事に対して組織全体で粘り強く取り組むことのできる企業は、短期的な業績のみならず、国際的に通用する本物の競争力を手に入れている。
例えば、今や、世界に誇る日本のモノづくり企業となったキヤノン。同社は、決して時流に乗った勢いだけで成功を収めているのではない。
主力製品の研究開発の開始から製品化に成功するまでの期間を見ると、レーザープリンター21年、バブルジェットプリンター26年。今の同社の繁栄は、20年以上前の種蒔き、そしてその間の艱難辛苦に耐える忍耐と執念が生み出した賜物なのだ。
一方の飽きっぽい企業は、せっかくいい取り組みを始めても長続きせず、本質的な競争力にまで高められない。物事に対する執着が希薄なのだ。
実は、この「粘り強さ」の有無こそが、企業の競争力に決定的な意味を持っている。
「粘着力欠乏症」という病気
トヨタや花王など強い現場を持つ一流企業では、10年を超えるような全社的なプロジェクトがいくつも走っている。
だが、こうした企業は極めて稀な存在だ。多くは「粘着力欠乏症」に蝕まれ、長続きしない。
この病気は、今になって急に起こっているのではない。景気低迷に伴うリストラ、協力会社などへのアウトソーシング、非正社員化の加速…。様々な要因が絡み合って、粘り強く問題を解決し、進化させていく力が、少しずつ失われてきたのだ。
「様々なことに取り組んでいるが、どれも長く続かない」—— 。苦境に陥った多くの企業で聞かれる言葉だが、そうした当事者意識のない言葉を幹部が吐いているうちは、その企業の再生はない。
「続かない」のではなく、「続けよう」という意思も能力もないことが、最大の問題なのだ。